「地域の現状を伝えるのが目的です。住民が地域に興味を持つように、番組は地域活動に焦点を合わせています」
ミニテレビ局で、唯一のスタッフである青沢学さんの本業は、老人憩いの家の職員。忙しい勤務の合間を縫ってのボランティアだ。どうしても忙しいときは、地域の若い人がやってきて気軽に手伝う。そこにまた世代を越えた交流が生まれた。
「大野村の現在の高齢化率は一七〜八パーセントと、それほど高い方じゃありません。しかし、子供が少ないため、数年後には一気に高齢化が進むことは明らか。一人暮らしのお年寄りも増えている。こうしたお年寄りが家に閉じこもって孤独になったり、隣近所と馴染めなくならないように、もっとテレビを活用したいと思っています」
その案として考えられているのが、病気や障害で外出が苦手な人のために、地域内の風景を放送すること。四季の自然の移り変わりや、近隣の模様を画面に映し出す。また生活に密着したところでは、農業や健康に関する情報提供、各種研修などの番組化を検討している。地域内はもちろん、地元の人と都会に暮らす人を結ぶ身近なメディアとして、全家庭視聴の記録はまだまだ続きそうだ。
メディアの一番近くにいる高齢者
六〇代以上になると高齢者は新聞やラジオ、テレビに接触する時間が他の年代と比べて最も多く、一日に五時間以上あるというデータがある。マスメディアという空間の中に人のぬくもりを求める現実が、実社会の冷たさから逃避しての行きついた先であればあまりに悲しい。しかし一方で、気軽に社会とふれあえる道具のひとつとしてもっとマスメディアが活用されるようになれば、そこには大きな人の輪が生まれていく。暴力シーンや性描写で議論を呼んでいるマスメディアの今後だが、私たちも単なる規制ではなく、いかに「人とかかわり合うか」という根本から広く意見を交わしたいもの。高齢になってのメディアとのかかわり方、あるいはこうあってほしいというメディアのあり方など、どうぞ率直なご意見・ご感想をお寄せください。