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視聴率一〇〇パーセントのテレビ番組があった!

岩手県北部に位置する大野村は、人口七三〇〇人ほどの小さな村。酪農や畜産を主体とする農業が主産業だが、生産性は低く、毎年千人以上の出稼ぎ者を出している。

この村の一角にある水沢地区に、地区内七〇戸の全世帯を対象にした有線放送のミニテレビ局が開局したのは平成九年七月のこと。村の助成金を得て機材を購入し、運営は近隣三地区で結成したテレビ組合が行っている。とはいうものの、年間予算は"たったの五万円"とないに等しく、スタッフは住民の善意に頼るしかない。ところが、このテレビ局が制作する番組の視聴率はなんと一〇〇パーセント。不定期ながら放映時間は、冬期は午後七時、夏期は七時半から約二時間のゴールデンタイム。七〇戸と少ない世帯であることは確かだが、それにしても一〇〇%というのはすごい。

実は制作されている番組は、地区の運動会や祭り、学校の学習発表会や卒業式、そのほかさまざまな行事をカメラで追っていくだけという単純なもの。しかし視聴者のニーズが番組に直結しているのが強みだ。

農村といっても、誰もが一日中地域にいるとは限らない。大切な行事に行けなかった、家族が参加するイベントを見てみたい、といった要望を満たしながら、住民の地域参加を支援するのがこのミニテレビ。孫の学校での様子に目を細めるお年寄り、自分が映った画面を食い入るように見つめる子供たち…。「○○ちゃんは大きくなったねえ」「お嫁に行った□□さんのお嬢さん、祭りには帰って来てたのか」-。画面に見知った顔を見つけると、思い出話や噂話の花が咲く。

 

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村内に、地域の暮らしの息吹か電波を通じて届けられている。

 

また、お茶の間に流れた番組は録画して、出稼ぎ家族や、遠くに住む友人・知人へのビデオレターとしても役立っている。住民への情報サービスが、住民同士、あるいは村を遠く離れた人との心の絆となっている。

 

 

 

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