ってもいまは圧倒的に女性が優勢。なのにどういう訳か、この番組に限って男性の参加者が多いのは、定年後の生き方が問われているからではないか。仕事に没頭してきたから地域とのつながりは希薄だし、会社を離れ社会との隔絶感も深まる。どこかで社会とつながっていたいという思いが、この番組に向かわせているような気がします。最も人気があるのは、午前四時台の『こころの時代』というコーナー。宗教関係者なども出演して、いかに生きるべきか死ぬべきかを問う内容ですが、なんと全国で百万人もが聞いています」
静まり返った未明は集中力を高め、一つひとつの言葉が素直に心に響く。複雑・多様化する社会で、どこに価値観を求め、生を終えるべきか。そして自分は何をしてきたか。人生のひと仕事を終え、自分の心と向き合ったとき、ふと抱く迷い。そして孤独-。ラジオの奥から語りかけてくる声は、そんな不安をやさしく溶かしてくれる。阪神淡路大震災のときも、この番組が果たした役割は大きい。「余計な解説はいらないから音楽が聞きたい」「曲の説明だけでもいいから人の声が聞きたい」という被災地の要望に応えて、震災の恐怖が続く、心細い夜を支え続けた。だが、伊勢知さんはこうも続ける。
「本当は、この番組が必要とされるようではいけないんです。夜は寝る時間。ラジオなんか聞かないでもぐっすり眠れるのが一番です」
高齢世代が多いというリスナーたちは、心の奥で、この深夜放送に何を求め、耳を傾けているのだろうか。
ユーモア新聞で過疎化に歯止めを。高知県大豊町"瓦版"
過疎の山里なのに、
残った人と人の交流も少なく、
対話もありません。
たった一度の人生なのに、
老人はやがて訪れる永遠の静寂を前にして
話題もなく、新聞もなく、
薄暗い部屋でTVを見ています。
静かに、孤独を噛みしめ、
盆と正月に帰る子供たちを、
じっと待っています
高齢者の心のつぶやきを率直に記したこの文章を書いたのは、徳島県や愛媛県の県境と接する、高知県大豊町に住む自称ロクさんこと、山下久壽喜さん(五九)。