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番組を越えた交流の輪

「ラジオ深夜便」という深夜放送をご存知だろうか。

この番組は、毎日午後十一時十五分から翌朝の五時まで、*NHKラジオ第一放送で流されているもの(平成十年四月からはNHKFM放送の午前一時からも放送)。そもそもは昭和六三年の秋、昭和天皇のご容体報道をきっかけに、二十四時間情報が流せる体制づくりの一環として、深夜、静かな音楽などを放送したのがはじまり。その後、特集番組として不定期に放送され、予想外の反響に後押しされる形で、平成四年からはほぼ年中無休の番組として定着した。しかも、その大半が高齢者で、六〇歳以上が八割を占める。決して高齢者向けに制作した番組ではない。フタを開けてみたら、高齢者が多かったのだという。(*但し、いずれも月や曜日等によって休止や変更あり)

「ラジオ深夜便」は、朗読やインタビュー、リスナー(聴取者)からのお便り、ニュース、宗教講話、音楽などで構成される。ベテラン・アンカーマン(アナウンサー)のゆったりした語りが特徴で、「静かに流れてくるアナウンサーの声を聞いているだけでホッとする」というファンは多い。アンカーマンの元には、感想や要望を書いたハガキや封書が送られてくる。その数は毎月一〇〇〇通余り。電話も三〇〇〇本ほどかかってくる。反響の多いときは、電話のベルは鳴りっぱなし。

「投書は番組宛ではなく、ほとんどがアンカー宛。相手が誰でもいいから何か伝えたいというのではなく、ぜひこの人に聞いて欲しい、という感じがします」(NHK広報室戸次正道副部長)

この反響がやがてリスナー同士の輪に発展していった。「□□さんにこんな情報を教えてあげたい」「△△さんの意見に私も同感」といった投稿をきっかけに、番組で紹介される住所を手がかりに、文通や電話のやりとりがはじまった。そのうちに、「ラジオ深夜便を聞く会というものもあるらしい」との噂が番組担当者の耳に届く。そこから発展して平成六年十一月に、リスナーとの交流を深めるための「ラジオ深夜便のつどい」が埼玉県戸田文化会館で開催、全国から八〇〇人が集合した。「声だけしか知らないアナウンサーに会ってみたい」「深夜の時間を共有している他の仲間に会ってみたい」という期待が会場に溢れた。

 

 

 

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