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とをするな」との非難が相次ぎ、行政までが「齋藤牧場のマネをしてはダメだ」と通達を出す始末。

「だけど、お金もない、労働力もない中で石だらけの山を生かそうと思ったら、これしかなかった。まあ、半分はやけっぱちですナ(笑)」

 

迷ったときは答えが見えてくるまで放っておくのが一番

ところが、結果的には周りの開拓者が次々と脱落、離農したのに比べ、齋藤牧場は徐々に規模を広げて当初八・五ヘクタールだった牧場は、今や一三○ヘクタール。牛の習性と草や土、水、木など山全体の生態系、その本来の調和を大切にしたため、表土を起こさず農薬も除草剤も撤かないから草はいつまでたっても健康そのもの。牛も朝夕毎日、谷間から山頂まで歩くので、至って健康で乳の質もいい。交配も牛任せ。二頭の種牛で夏までに一〇〇%受胎するという。はやりの人口受精など無縁だ。そして、人間は、といえば、牛の放牧という「手」を添えるだけだから、労力もいらない。

 

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「木がないと土地が乾燥し過ぎてダメになるから、こういう山地は少なくとも三〇%は立木を残さないと草も悪くなる。山を剥(む)いてしまうと当座はよくても、五年、一〇年と経つうちにバランスが取れなくなる。また、立木があると湧き水が出るから牧場の中には牛の水飲み場ができるし、牛が木陰で休むこともできる。単純に牛のことだけや人間の都合だけを考えて、自分勝手な思いでみだりに自然に

 

 

 

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