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いう、まさに"山の牧場"だ。冬はまっ白な雪に覆われるが、春になれば山一面は緑のじゅうたんと化し、その中を牛は日がな一日、自由奔放に歩き回り、草を食む。時折、ウサギやキツネも行き交うという。

「そこらの公園よりもずっと、きれいですよ。春はこぶしの白い花、桃色の桜が咲いて、フキノトウやワラビの宝庫。夏は川にホタルが飛びまわり、秋になればヤマブドウやクルミも採れる。ここは地形をほとんどいじってない自然牧場だから、何でもあるんですワ」と、齋藤さんは満足そうな笑みを浮かべる。こんな牧場、いままで見たことも聞いたこともない…。

「笹と灌木の一部を焼き払って、牧草の種を蒔いて牛を放牧したら、牛は火入れのあとに生える笹や雑草の若芽を食い歩く。と同時に、牛のひづめが牧草の種を土に埋め込んでいくんです。毎日のように踏まれるうちに雑草や笹は次第に姿を消しますが、牧草はかえって成長がよくなる。牛の糞尿も肥やしになるんでしょうね。こんな放牧をくり返していると、四年めにはもう完全な牧草地になる。つまり、草地の造成も種まきも、肥料まきも、み〜んな牛がやってくれたわけですワ。ハハハ」

 

            齋藤牧場の雄大な風景…

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