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「関係団体の利害調整の場である審議会に持ち込んだら新しい理念が出るはずがない。審議会をぶっ飛ばして国民と手を結ぼうと思ったからです」

当時のいきさつについて、ある官僚は言い切る。

研究会の人選にも若手官僚は"革新性"を発揮する。たとえば、デンマークの在宅福祉に詳しい岡本祐三阪南中央病院内科医長(当時。現、神戸市看護大学教授)と女性問題の論客、樋口恵子東京家政大学教授の二人を省内の反対を押し切って委員として招いた。「お二人のおかげで市民とのルートが開けた」(Bさん)からこそ法案への市民参画という第四幕が開いた。

 

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(平成十年三月三日付毎日新聞)

 

法案成立から、よりよい制度施行に向けて

研究会の作業は一九九四年十二月、報告書「新たな高齢者介護システムの構築をめざして」として実を結ぶ。それによると高齢者介護の基本理念を「高齢者が自らの意思に基づき、自立した質の高い生活を送ることができるように支援すること」とした。オカミが、自立不能な社会的弱者を、福祉という名の行政処分(措置)として救済するという古いパラダイムを放棄したのだ。

その内容は、1]予防とリハビリの重視、2]高齢者自身による選択、3]在宅ケアの推進、4]利用者本位のサービス提供、5]社会連帯による支え合い、6]介護基盤の整備などを盛り込んでいる。さらに「介護システムのありかたしとして保健・医療・福祉の専門家によるケアチームによるケアマネジメントを導入、費用負担の仕組みとして社会保険方式を提案。給付対象は六五歳以上としたうえ利用者負担も明示

 

 

 

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