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また、最近は、気の合った友人同士で暮らすという人も増えているが、その延長で同じ墓に入りたいという望みも、現状ではなかなか困難だ。というのも、家族や親族以外の人が入ると、誰がそのお墓を引き継ぐかで複雑な問題が生じる恐れがあるからだ。

たとえば、BさんとCさんが一緒に入るべくお墓を建て、Bさんが先に亡くなったとする。このとき、先に述べた通りお墓の永代使用権はCさんのものになるという遺言があればよいが、それがない場合はお墓の承継はその親族のものになるというのが慣習的に認められているため、Cさんが承継者になるためには、Bさんの親族と話し合いを持つ必要があり、さらに、まとまらないときには家庭裁判所の判断を仰ぐことになる…、となにやら面倒くさい。法律関係まで含む問題を避けるために、お墓の使用は親族に限るという霊園が多いのが現実なのだ。

戦後、憲法も民法も新しく制定された。結婚も家対家から、個人対個人のものと受け止められるようになり、さらに、昨今では夫婦別姓すら論じられているというのに、墓の形式だけは旧態依然としてなかなか変わってはこなかった。しかしここ数年、そんなお墓事情にも新しい動きが見えてきている。承継者がいなくても購入でき、かつ、供養もしてもらえる共同形式の墓「永代供養墓」が登場し、急増する勢いを見せているという。ようやく、実情に追いついてきたというところか。

「永代供養墓」を簡単に紹介しよう。大きく分けて個別の納骨スペースが集合したタイプと、個別のスペースはなく、モニュメントの下などにまとめて納骨するタイプとがあって、寺や霊園が年に一度合同で供養したり、三十三回忌まで個別に供養した後、合同供養に移すなどいくつかのやり方がある。いずれも寺や霊園が続く限りは供養してもらえるのがメリットだ。

たとえば、比叡山延暦寺では、将来無縁になってしまう人のために永代にわたって管理、供養をする「久遠墓」を開設している。さらには一歩進んで、家や血縁、または檀家制度にもとらわれず、市民運動など、趣旨を同じくする者同士が一つの墓に眠り、供養も会員がしていくという「共同墓」も生まれている。

 

 

 

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