3 まとめ
現代の青少年は、テレビ、エレクトロニクスゲーム等での疑似体験は豊富であるが、自然に直接接することで得られる感動や楽しさ、更には厳しさといったものを味わう機会が少なくなってきていると一般に指摘されている。これにはいろいろな原因が考えられようが、楽しくないことや辛いことは避けて通ろうとする現代若者気質といったものも大いに関係していると思われる。
そこで、この『あかぎダイナミックフィールドセミナー』のプログラム開発に当たっては、国・公共の立場からする実体験を確保するといった点を中心に据えつつも、『楽しさ』にも十分配意し、実施に当たっても、参加者が楽しみながら活動しているが常に目配りを怠らないよう留意した。
参加者の反応は、アンケート、感想文、行動観察などを総合するに、『1週間、楽しかった』とした上で、学習成果として、体力不足の自覚と体力増強の必要性、危機管理能力開発の必要性、環境問題の認識、自然体験による感動、人と人との触れ合いによる感動などを挙げる者が多く、主催者側として、プログラムのねらいはそれなりに達成されていると受け止めたいが、問題点・課題も多く、3回目以降も具体的プログラム内容と実施方法の更なる改善の必要性を感じている。
以下、反省点と今後の課題をいくつか列挙してみたい。
(1)このプログラムは、『関東平野を雄大に流れる利根川のはぐくんだ自然と文化を体感する』をコンセプトとして、順に、源流付近、上流、中流、下流の各流域で、野外活動と文化活動を行おうとするものであるが、昨年度と今年度は、中流止まりになっている。これを拡大して下流までとするのが今後の課題である。また、それぞれの流域で取り上げる活動は、各回ごとに工夫することになるが、『より楽しく、より厳しく、より安全に、より効 率的に…』ということになると、なかなか選択が難しい。
昨年度実施した山登り・パラグライダーは、今年度については取り入れなかったが、源流付近の活動となると、山登りを割愛し難いようにも思われる。いかに『楽しく』山登りをセッティングするかが、今後の課題である。
(2)このセミナーのように、危険を伴ういわゆる冒険活動プログラムでは、安全管理に人手と費用がかかる。これをいかに効率的に行うかが、事業の成否を分けるポイントになる。スタッフの能力開発とともに、民間の専門知識と技量を持ったボランティアの確保が重要になる。
(3)いかだの組み立て方のノウハウは確立したが、1艇(6人乗り)を陸地で持ち上げるのに10人以上の人手が必要であり、更なる軽量化が必要である。軽量化と浮力の確保とのバ ランスをどこに求めるか、課題は多い。
(4)いかだのパドルは、手作りを重視して、木製のものにしているが、重量があり、これの軽量化も課題である。市販のプラスチック製は軽いが、手作りの持つ野性味や作り上げたときの達成感が損なわれる。手作りのままでの軽量化を探るのが最善であろう。
最後に、平成11年度は、7月下旬から8月中旬の間に、10泊11日程度で、利根川源流から河口までを人力で踏破する全日程コース、各3泊4日で活動する源流・上流コースと上流・中流コースの3コースを設定し、実施へ向けて企画・準備中である。