子どもたちの方は、「親という逃げ場」があるので、強気になるらしい。指導補佐員といっても、常に子どもと接しているベテランではないので、その悩みは深いようだ。
一方、担当者としては、指導補佐員の確保が難しい。本事業は3泊4日の事業で、事前研修の1泊を含めると、4泊5日の長丁場となる。指導補佐員のほとんどが高校生・大学生なので、夏休みのこの時期はアルバイト・夏期講習等でなかなか忙しい。「この人は、子どもの活動に関心もあるし、野外活動の知識もあるから、適材ではないか」と思い、声をかけても「その時期はちょっと都合がつきません」というケースが多い。
当青年の家では、年3回の「指導補佐員研修会」を開催して、指導補佐員の募集と資質の向上に努めているが、本事業の準備のものではない。本事業のために、年間を通して何らかの活動を行っていれば、人材確保も容易なのかもしれない。
5 次年度への展望
次年度の事業展開を考える上で、迷っている点がいくつかある。
一つ目は、「親子」という点である。本事業が企画された発端が「国際家族年」であり、「家族のあり方をもう一度見直そう」という点にあった。実施後の感想を見ると、子どもたちの感動よりも、親の感動の方が強いように思える。その点では、大いに意義のある事業であると自負している。
しかし、子どもたちを見ると、
1]「親の存在」が「逃げ道」になってはいないか、「親」の存在がなかったら、この子たちは、どんな反応を示すのだろう。
2]指導補佐員も、親に遠慮することなく、もっと子どもたちの中に入っていけるのではないか。
3]施設条件から、親子で24組の参加が限度だが、子どもだけの参加であれば48人の参加が可能であり、幅広い異年齢集団の形成が可能なのではなかろうか。
二つ目は、体験する課題が易し過ぎないかということである。もっと、サバイバル的要素を取り入れられないだろうか。いかだを組んで川を下る、火を起こして炊さんする、木の上に家を作り寝床を確保する。水を蒸留して飲み水を確保する、等々。全国の事例・民間の事例を見ると、すでに取り組んできていることである。
しかし、飽食の都会生活の中で育った子どもたちに、しかも、短期間の中で、どこまで取り入れられるのか。慎重な検討が必要だが、「自然の中で暮らしたんだ」という強烈な印象を得られながら、しかも自然への愛着がわくプログラムを考えたい。
三つ目は、プログラムに余裕がないのではないかということである。
せっかく都会生活を離れて、自然の中に来たのだから、いろいろ経験させたいという思いから、プログラムが過密になっていないだろうか。親の感想文の中に「子どもが対象なのだから、9時には就寝できるようにしてほしい」という意見があり、気になっている。
このことは、二つ目の思いとは矛盾することだが、宿泊数が諸々の条件の中で、増やすことができない以上、プログラムを精査する以外にない。
いずれも、まだ結論を得ていない。今後、慎重に検討して選択したい。