親と子の野外活動体験
東京都五日市青年の家 社会教育主事補 猪股 正志
1なぜ、「野外活動」なのか
五日市青年の家は、周りは緑深い山に囲まれ、真下には秋川の清流を見下ろせる、自然環境に恵まれた場所に設置されている。
「山」と「川」など、全国の数ある青年の家の中では、ごく当たり前のことで、特記すべき環境ではないかもしれないが、「東京都」の中では、重要な要素なのである。
実は、東京都の3分の1は森林である。そして、その面積は7万8千ヘクタールにもおよぶ。(そのうちの3分の1は島部)
しかし、東京で暮らす大多数の人は、この数字を聞くとびっくりする。日常の都会生活の中では、それほど意識することもないし、感じることもできないのが実態であり、野外活動は、都外に行かないとできないとさえ思っている人も少なくない。
言うまでもないことだが、森林は、「水源」「環境保全」等、都市生活にも極めて密接に関連しており、その役割は都市生活にとって重要であるにも拘らず、忘れ去られているのが実態である。
五日市青年の家が、「山」と「川」に囲まれた場所に設置されていることは、「森林」と「都会生活」を結びつける上で重要な要素であり、この豊かな自然環境をフルに活用すべき使命を感じる。
2 事業のねらい
前担当者が、事業を企画するにあたって、平成7年が「国際家族年」であることから、「もう一度家族のあり方を見直すことのできる事業」をということで「親と子のネイチャーセミナー〜親子自然体験隊〜」の事業が始まった。
平成10年度からは「親と子の野外活動体験」と改名して実施している。
当初の企画の意図やプログラムを可能な限り引き継ぐ中で、この事業のねらいを3点設定している。
一つ目は、前述したように、五日市青年の家の立地条件からくる「自然とのふれあい」ということである。
都会生活の中で「自然と触れあう」機会が少なくなってきていることは事実である。土に触れることさえ「汚いから、イヤ!」という子どもが増えていると聞く。
自然に囲まれた中での生活を体験することは、都会生活の中では、想像以上に必要になってきている。
二つ目のねらいは、異年齢集団の中での生活である。
発足当時は、小学校4年生から中学校3年生までの集団づくりを試みたが、現在は、小学校4年生〜6年生24名(親子で48名)の募集にした。できる限り、男女・各学年が、同数になるようにしている。
そこに、お兄さん・お姉さん役の指導補佐員(東京都の青年の家では、お手伝いをしていただいているボランティアを指導補佐員と呼んでいる)が加わり、班を構成して活動する。