もう一つは、学校教育的な発想で、ある文化なり、価値を相手に伝承するという考え方で職員が研修生と対応している感じです。教えよう、教えようという感じで、そうでないと教育機関でないという妙な錯覚を持っている。団体利用のプログラムの中に社会教育アワーをつくれ、そこで、所長が講話をするというようなものですね。そうでなくて、施設や建物そのものが、教育サービスをするとか、職員の振る舞いが教育サービスをする方向になるべきだと思う。親子連れのプログラムにしても、ここへ来たら家庭教育についての講義に出なくちゃいかん、ではなくて、例えば複数でお見えくださいとすればいい。そうすれば自分のところの子どもの扱いと他の家族の扱いを主体的に気づいて考える。あるいは、野外炊飯にしても、自分や家族の行動を通じて、比較したり、考えたり、競争したりという、それで親たちが家庭教育を考えるなど、ちょっとした工夫なんです。それを学校教育的な発想での教育にすると、またまた、今度は家族が来なくなる。
なお、家族であれば、今までとは違った要求が出てくるだろうと思う。例えば、各部屋にポットとお茶ぐらい置いてくれ、という家族的な要望が必ず出てくる。そのときに、青年の家は旅館じゃないと突っぱねるんじゃなくて、家族的なという今までの青年の家になかった何かを求めているんだろうなと、その一つ一つの分析があってこそ、家族プログラムがつくられていくのでしょう。
五十川 家族の人たちの使いたいという需要というか、希望というのは多いんですね。まだまだPR自身も下手ですし、十分ではないのですが、例えばうちの施設では家族単位のクラブ制度、登録制度を持っているんです。現在350組を超える家族が登録してもらっているんです。背番号制になっていまして、それで、第2,第4土曜日は、そのクラブの人たちのために予約を100人あけてあるんです。前の日でもいいですよ。何回も来ている人は、来て、その場で申込書を書いてもらって提出していく。「従前と変わりませんから、どうぞ」と言えば、ものの5分で受け入れ手続きを終わるわけですね。それで「よろしく」と。新しい家族を連れてきましたというふうに口コミによる核分裂を起こしていく。
ですから、先ほど開かれた施設にしていくというのは、1つには、そういう家族のクラブ制度みたいな方法論もあるのです。それを、うちは友の会制度と言っていまして、登録をして数年たって、子どもたちが大きくなっていくと、自動的に抜けていきます。