まず最初に、これはなかなか難しいんだろうと思うんですが、家庭教育というか、家庭と青年の家との連携とか協力というのは、一体どのように、どこまで―これは抽象的になるかもわからないんですが、どういうスタンスでいったらいいのかというのはいかがなものでしょうか。
家庭に対する青年の家からの働きかけ
伊藤 先ほど司会の吉澤さんの提案の開かれた青年の家に賛成したのは、大人たちがそこに参画してくるという効用です。参画することによって自分の存在が承認される喜びは大きいですからね。責任を課せられて、それを果たした充実感というのは大きいわけです。そうなってくると、大人たちも子どもの教育なり、社会をよりよくしていこうという方向に変わってくる。だから、開かれた青年の家は価値があるし、中教審が言っている大人たちを変えていく役割を担える。
同じ視点で、家庭に対して青少年施設も働きかけなければいけない。今までのは家庭教育が悪い、だから、家庭教育をしっかりするように家庭教育学級をやれば、こういう話だった。でも、家庭教育学級だけがすべてではありません。多角的でなければいけないでしょう。その一環として、青少年施設も家庭教育に貢献するプログラムをもっと開発すべきです。
今ようやく家族ぐるみの利用プログラムが始まっていますが、これに対する施設側の腰は必ずしも据わっていない。お客集めじゃなくて、家庭教育をどうしていくかという理念をはっきり持って、家族ぐるみのプログラムを開発すべきだと思います。
五十川 現場から、今の伊藤先生より、もうちょっと具体的に提案をさせてもらいますと、これは公立も含む青年の家あるいは少年自然の家――青少年教育施設と考えていいですね。いまだに家族は受け入れないという施設が相当数あるという現実。ということは、規則で5人以上を団体と言っていますから、3人は5人じゃないですから、それは受け入れませんというにべもない運営をやっている施設が相当数あるという現実がありますね。
ですから、今、伊藤先生がおっしゃるプログラム開発というのは大事な部分なんですが、それ以前の問題として、運営の中での1つの程として、開かれた施設にすることは私も大賛成なんですが、そのすべをまずやらない限り、観念論で終わってしまうという現実がありますね。
それと、これは私自身が実際に体験してきたんですが、新しい少年自然の家をつくったとき、たくさん国立の施設があるところで、対象人口の少ないところで、施設をどう有効に使ってもらおうかと思ったときに、たまたま学校5日制の試行が始まったときにタイミングが合ったものですから、家族に門戸を広げようという努力をしました。これは口コミで広がっていったんですが、そのとき、やり始めて2年目ぐらいから、隔週の第2,第4金曜日の夜から利用したいというグループが出始めたんです。
そのときに、いや、うちの出入りは9時から4時までですから、4時以降は入ってくるのを認めませんという運営をやりますと、金曜日から来たいという家族は、土曜日の朝出発して昼ごろに着くという話になりますね。所長の判断で「いいですよ、そのかわり夕食はとって入ってください」とすると、金曜日にお母さんとかお父さんが勤務を終わって、子どもを乗せて、途中のファミリーレストランで食事をして、10時とか10時半にやってきて、土曜日朝から1日フルに活動して、もう1泊して、日曜日早目に帰るというパターンがふえて、それが1つの使いやすいという話になって、理解してもらえるという話になって、どんどん口コミで広がっていったという事例を、私自身、実際に体験しています。