日本財団 図書館


それは1つの現象なんですが、そういったもののいろんな積み重ねが、今の子どもたちにとって幅広い問題に発展してきているんだなという感じを私どもの施設の中でも感じています。

 

012-1.gif

 

鈴木 私のところの青年の家は、宿泊を伴わない日帰りの都市型青年の家でございまして、そういうところから見た青年像だとか、あるいは事業のお話しということでお含みおきいただければと思います。

まず、事業を通して青年について感じることは、心を開くまでは時間がかかるけれども、一度これは友達になれるという感覚を持った段階では、非常に早く対応ができ、とことん仲間意識が持てると感じています。例えば、今年度、水戸の大洗の海岸でハンググライダー教室を実施しました。仲間を飛び立たせるために、順番でロープを引っ張る者、翼を支えてやる者、声援で応援している者に分かれ実技が進みました。教室が終わりかけ、講師がもうやめるぞと言ったんですが、まだ成功していない者がいるからやらせてくれと、みんなで力を合わせて続けるんですね。それで、偶然かもわかりませんが、みんな成功したんです。最後は、講師を胴上げして終わっているんです。私は、そういう光景を目の当たりにして、今の青年というのは、一度歯車がかみ合っていくと、非常に大きな力を発揮してくれるんだなというようなことを特に強く感じています。

ただ、都市型青年の家ですから、サークル活動にやって来る青年を見ているんですけれども、自分のやりたいことは夢中なんですね。そこで、同じテニスサークル同士で何かやったらどうかなというようなことを働きかけると、そこまでは望んでいない。適当に自分たちの仲間同士で楽しめればいいということでして、青年の家としては、各サークルをどうつないで心の交流を図っていくのかを重要な課題の一つとしているところです。

もう1つは、昔もそうだったんでしょうけれども、将来を見通すというか、そういう感覚は余りないかなと。今が楽しければそれでいいんじゃないかなという感じは受けますね。

それから、もう1つ感じることは、話していて、非常に言葉がぶっきらぼうな面があることと、考えていることを適切に表現できないことがあるために、いろいろな青少年を取り巻く問題点も出てくるのかなと感じています。

伊藤 まず五十川さんがご指摘になられたのは、親たちに何か問題があるということだと思いますが、その親たちというのは、生まれたのはいつごろでしょうか。昭和40年代から50年代……

五十川 ええ、40年代でしょうね。

伊藤 あのころの青少年は何と言われていたんですか。三無主義……。

五十川 そうですね。

伊藤 無気力・無関心・無責任という三無主義の青少年が今、大人になっているんですから、子どもの教育にも影響が出てきているんでしょうね。

鈴木さんがご指摘になられたのは、青年は条件さえ合えば夢中になるということなんですね。だから、社会的な仕組みがここでも問題になってくる。ただ、その仕組みをつくっても、気になるのは、社会に対する心の窓というんですか、それが今の青少年はちょっと小さいんじゃないか。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION