これと同じことが、マージャンよりもパチンコをするようになったことにもいえる。
子どもは家庭の中で基本的な社会規範を身につける。しかしそれが難しくなっていることは先に指摘した。
日本はこれまで、たとえ家庭の中でしつけられなくても地域社会(世間)のなかでしつけるシステム(社会的装置)を持っていた。
民俗学的に見れば、名付け親制度、若者組、娘組などがある。親がしつけを怠っても世間で面倒を見ていたのである。
ところが今や地域社会が崩壊し、世間教育がすたれてしまっている。子どもの行動を規制する規範がないのである。
子どもの生活空間は三つある。それは「ミウチ(身内)」であり、「世間」であり、「赤のタニン」である。
子どもにとって「ミウチ」とは、まず家庭である。こうした空間にいると子どもの心は休まる。「ミウチ」の規範はそれほど厳しくないので子どもにとって心の居場所である。
「世間」は人目が気になる世界である。かつては親が子どもを育てる時、「世間体が悪いのでそれだけはやめてくれ」といっていた。
子どもにとって世間は学校であり地域社会である。そこでは友達や先生、八百屋や魚屋の人たちがいる。
子どもはそうした人の顔を知っているし、自分の顔も知られている。こうした面識のある他人同士がいるのが地域社会である。
三つ目が「赤のタニン」である。そこではこれまでの規範が通用しない。その典型が外国である。外国では日本の常識が非常識になることがある。
だから「旅の恥はかき捨てよ」ができる。そこの人たちとは面識がまったくない。子どもにとって「赤のタニン」はテレビやラジオといったマスメディアの世界である。
子どもの自我が安定するのは「ミウチ」の絆が強くて「世間」が広く、「赤のタニン」が狭い場合である。
■4 どんな施策が考えられるか
そのためにはどんな施策が考えられるか、2〜3提案する。
1)生活体験学校づくり
子どもたちが1週間程度寝泊まりできる空間を用意する。
親元を離れそこから学校へ通う。そこではにわとりを飼育したり、ポニーの世話をすることができる。
そして近くの農園ではキャベツやホウレンソウを植える。子どもたちはもってきたお米でご飯を炊き、とれたタマゴや野菜で食事を作る。当然おふろや洗濯、掃除は自分たちでする。
2)地域内交換留学のすすめ
自然体験と生活体験を味わうことができる山村留学をすすめるのはいうまでもない。
ところがこれはけっこう金銭がかかる。そこで出村留学の準備として地域内の交換留学を提案する。
同じクラスの子どもたちが1週間友達の家で生活をする。お互いに交換するので金銭はかからない。友達の家で生活するとお手伝いはするし、ふとんの上げ下ろしも自分でする。
また、友達の両親を見ることで自分の両親のことを理解できる。さらに、少子化時代において兄弟が少なく親戚が減る。この交換留学をしたもの同士は将来親戚的なつき合いが期待できる。新しい家族の創造にもつながるだろう。