日本財団 図書館


現在、単身家庭の子どもの比率はおよそ4分の1に達している、というデータがある。

イギリスでも同じことが生じている。単身家庭の子どもの比率は19%と2割に近い。そして、失業率の高さや低賃金の増加により、子どもを持つ家庭の貧困化がすすんでいる、という。

フランスは、欧米諸国の中では宗教的な関係(カソリックの人が多い)から比較的離婚率は低いほうであった。

それが婚姻の減少、晩婚化、離婚の増加などで伝統的な夫婦を基盤とした家庭の形態が崩れつつある、という。

例えば、大都市では単身家庭の子どもの比率は2割強、全国レベルでは1割台である、という。ちなみに、ドイツの単身家庭の子どもの比率は17.2%で2割弱である。

欧米諸国でも家庭環境の変化が著しい。伝統的な家族構成が崩れつつある。と同時に家庭の教育的機能が低下している。

社会が成熟すると少子化、晩婚化、非婚化がすすみ、これまでの家族の役割が薄れてくる。

家族のあり方は各国で異なっていた。きわめて文化的な色彩の強いものであった。これが先進国といわれる国では共通の問題として出現している。この認識は大切である。

こうした視点に立つと何がグローバルスタンダードであり、何が日本固有の問題であるかが識別できる。

■3 気になる大学生の現象

次の世代を育てる意識の喪失は、日本だけでなく先進国といわれる国が共通に抱える問題である。それでは、日本の青年はどのような形で社会が抱える問題を映し出しているのだろうか。

青年の例として大学生を取りあげる。そして気になる現象を三つ指摘する。

1)声が小さい

ここ5年ぐらい新入生の声が小さくなっている。入学式が終わったあとのオリエンテーションのとき、簡単な自己紹介をしてもらう。

その時の学生の声が小さい。「もう一度お願いします」といっても大きくならない。どうも自分の声の大きさを把握できていない。

なぜ声が小さくなったのだろうか。その1つに子どもの頃外遊びをしていない、ことが指摘できる。

外で遊ぶと、どの程度の声を出せば友達に伝わるか自然と身につけることができる。屋内遊びをしてきた彼らは声を出す体験が乏しいのである。

もう一つは、彼らが利便社会で育ってきたことが指摘できる。極端にいえば、この社会では一日の間、一言も声を出さなくても生活できるのである。

今、小学2年生の一人っ子の一日の生活を想定する。朝起きた時眠い眼で朝食をとる。母親が「朝食はパンにしますか。それともご飯にしますか」と尋ねても子どもは答えない。母親は忙しいので「パンですね」というと子どもは黙ってうなずくだけである。

この子どもは学校に行っても、グランドで遊んでいる友達の中に入っていけない。隅のほうで腕を組んでみているだけである。つまり傍観遊びをする。だから声を発しない。

チャイムが鳴り教室で5時間の授業を受ける。まず授業中手を挙げない。だから指されない。ここでもお客さんとして座っているだけである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION