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京都ですら観光客の減少に悩まれている現在、例えば京都と滋賀の観光資源を組み合わせた「京滋観光圏」といった広域ルートの設定も一つの手法だと思います。けれど、京都と同じような資源を組み合わせて協力するだけでは、京都にとっては観光客を奪われ、結局は京都のホテルに泊まっていただいて、延暦寺を見るついでに効率的に回れる大津周辺だけを日帰りで周遊するといった形にとどまる程度になるでしょう。

京都との関係で滋賀県の集客力のアップを考える時には次の点がポイントになると思います。一つは京都からの日帰りではなくて滋賀県に泊まっていただく、ということ。二つ目は京都に近い大津周辺に集中するのではなく、県下全体に来ていただく、ということ。それから三つ目としては、京都のお客様を奪うのではなく、新たなお客様を呼び込み、そうした方が京都にも訪れるということでお互いにメリットになるという方法。

これらの条件を満たすためには、「京都にはない滋賀県ならではの魅力は何か」ということを考え、そして、それを全面に打ち出しながら文化財などの観光資源とうまく組み合わせていく必要があると思います。

滋賀県ならではの魅力について、私はリゾート性を一番強調したいと思います。「リゾート」という言葉は、繰り返し訪れることが語源だとか、滞在性の高い保養地を指すというような様々な定義がありますが、ここでは快適性という観点からとらえていきたいと思います。

滋賀県でリゾートという時、当然まず第一に考えられるのが琵琶湖だというのは言うまでもないことです。湖というのは当然景観、それから視界、視野も広がっていくし、水が命の源という点からも快適性に貢献する非常に大きなメリットがあります。京都を目的に来られた方であっても滋賀県のゆったりと広がる水辺空間に滞在していただいて、そこを拠点にして、昼間に京都を探訪していただくというのが十分に魅力的な商品になるのではないかなというふうに思います。

京都の場合は首都圏から来られる方が43%、近畿圏内が12%です。逆に滋賀県の場合は首都圏からが21%、近畿圏からが43%ということになっています。京阪神あるいは中京から繰り返し滞在に訪れていただいているということは、まさに先ほど申し上げた「リゾートとしての可能性が十分にある」証拠とも言えます。リピーター客が多いことでパーセンテージが高くなっているという仮説が立てられると思うのです。

近郊リゾートの条件としては、1]アメニティー=快適性、2]ホスピタリティー=もてなしの心、3]アクセシビリテイー=足の問題、どれだけ便利にそこに行けるかということ、そして4]リーズナブル=経済性、の四つがキーワードになると思います。

1]アメニティーについては京阪神あるいは中京との違いをどのように演出するのかを琵琶湖周辺地域全体として十分に検討する必要性があると思います。リゾートという観点からすると、京阪神などとの最大の違いは当然自然環境に見出すべきであり、それが誰にでも体感できる形、わかりやすい形で実現されていくことが必要だと思います。

2]ホスピタリティーについてはもう言い尽くされている気もしますが、ちょっとした心遣いの積み重ねが地域のファンを増やしていくと思います。

 

 

 

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