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分科会C <滋資県の集客力は強いのか弱いのか?>

担当パネリスト 高崎邦子

 

○高崎

私どもでは観光地別に宿泊者数を集計をしております。これを見ていただくと、96年の3月からの1年間に滋賀県の宿泊施設に泊まられた方の数は14万1,064人ということがわかります。日本全国で比較をしても47都道府県の中で滋賀県は41番目になっています。

また、先ほどのパネルディスカッションでも「金閣寺、清水寺、大原、延暦寺などは何度も訪れているけれど、滋賀県には一歩も足を踏み入れたことがない」とおっしゃる方がいる、という話が少し話題になりました。延暦寺を京都の一部と思っている方が多いわけです。よく言われる事に滋賀県は通過県である、ということがあります。

では、何故滋賀県は通過県なのか、ということを一旦観光の問題と切り離して考えると、やはり京都に近すぎるということが挙げられます。ですから一つ目のポイントとして、この近接性、これだけ近いということをどう活かしていくのかということを考えてみたいと思います。

私どもの財団法人日本交通公社では日本全国約9,000件の観光素材につきましてその評価づけを行っています。評価は特A、A、B、C、Dの5段階で、特A級とは我が国を代表する資源でかつ世界的にも誇示し得るもの、我が国のイメージ構成の基調となり得るものとなります。滋賀県では延暦寺、京都府では修学院離宮庭園などが特A級にあてはまります。これに次ぐランクをA級としており、その誘致力の強さ、全国的に観光重点地域の原動力として重要な役割を持つものを指します。京都の清水寺、建造物としての桂離宮などがこのA級に相当しています。B級は地方スケールの誘致力を持ち地方のイメージ構成の基調となり得るもののことで、東尋坊、奈良公園の鹿、飛騨高山の朝市あるいは札幌時計台、横浜ベイブリッジなどがこのカテゴリーに分類されています。

では、滋賀県の観光資源について考えてみたいと思います。観光資源の中で人文資源数というものがありますが、特A級の人文資源は全国で20カ所しかなく、その一つが今申し上げた滋賀県の延暦寺です。数値的に言えば滋賀県は資源数1であり、シェアは5%(20カ所のうちの1カ所)になります。

A級人文資源は全国に178カ所あり、滋賀県は彦根城、琵琶湖、園城寺の3件(対全国シェアは1.7%)を有しています。B級人文資源は全国1,092ヵ所のうち、56ヵ所が滋賀県内にあります(対全国シェアは2.1%)。

こうして見ると、滋賀県の人文資源は水準的には上にあると言えます。さらに先ほどのお話にも出ましたが、日本の重要文化財のうちの6.6%が滋賀県にあります。史跡、名勝、天然記念物でも2.4%のシェアをもっています。ですから京都と同じ、もしくはそれ以上の観光資源に恵まれていると言えるわけです。

ただし単純に京都府と滋賀県を比較すると、歴史的建造物や文化財、伝統工芸の密度の面ではやはり京都のほうが圧倒的に勝っていると言えるでしょう。宿泊施設や交通の便といったインフラの面、それから知名度でも、なかなか簡単に太刀打ちできるものではないと思います。

 

 

 

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