それから、集客力は観光地に本来備わっているものでは決してありません。もちろんもともとある観光資源に影響される部分もある程度はありますが、やはり、住んでいる人がそこを自慢に思わないところに行ってもおもしろくないのと同じように、集客力というものは築いていくことができます。強いとか弱いということにこだわらずに、弱ければ強くすればいいし、強いということで安心してはいけないのです。
三重県に絞っていろいろ考えた中で言わせて頂ければ、観光資源に比較的恵まれている割には集客力を高める取り組みはまだまだ不足をしているのではないかと思います。今はホスピタリティーや旅行会社との連携は限られた範囲でしかお話できませんでしたが、そういうふうな印象を受けました。
今までの話の中で、「観光」という言葉と「旅行」という言葉の使い分けを意識して聞いていただいた方がいらっしゃれば非常にすばらしいと思うのですが、日本では観光と旅行の使い分けは非常に不明瞭です。観光というのは旅行に含まれてしまう概念と言われており、運輸省の観光政策審議会が3年前に出した答申では、観光というのは「余暇時間の中で日常生活圏を離れて行うさまざまな活動であって、ふれあい、学び、遊ぶということを目的とするもの」と定義をされています。だからこれを見てもビジネス旅行は観光ではないということは明確でしょう。
当然、会議、見本市、コンベンションヘの参加のお客様など「ビジターズインダストリー21構想」の中にも書いてあるとおり、広い視野から見ていく必要性があります。この構想について一つ不満を言わせていただくと、バリアフリーについての言及が不充分だということです。ある旅行会社が昨年推計した結果によると、日本の障害者旅行の潜在マーケットは4,500億円と言われています。しかし、実際に顕在化しているのは約20%で、80%は行かれていない。その最大の理由が、やはり観光地、宿泊施設での受け入れ体制が不十分だということです。バリアフリーは、障害者や高齢者だけではなくて、子供、日本語に不案内な外国人、この人たちを含めて考えなければなりません。旅行者にとってのバリアは数多く存在しているので、あらゆるバリアを取り除く努力をしていかなければならないと思います。
それから、外国人観光客の人気コースもどんどん変化すると予想しています。最近目立っているのはテーマパークと温泉の組み合わせです。
アジアを1つにくくってはいけないと先ほど言いましたが、今、アジアから来る観光客の1位は台湾の方です。台湾の総人口は約2,000万人、中国で海外旅行ができる経済力を身につけた人はすでに5,000万人に達していると言われています。中国の総人口は10億人を超えるので、一番のターゲットということです。九州のテーマパーク、ディズニーランド、京都、奈良が定番ですが、当然三重県を取り巻く地域でもいろいろな計画が立てられています。中部国際空港しかり、リニア中央新幹線しかり、そして大阪ではUSJがいよいよ3年後の開業を目指しています。今まで関西に何が足りなかったかというと、世界的に通用するテーマパークです。これができれば関西空港に入ってそういうものを見て帰られるパターンもつくれるし、神戸のポートアイランドにも国際級のテーマパークを建設する構想があるようです。
このことは、三重県にとっては観光客を奪われてしまうのではないか、逆に今までよりもっと競争が厳しくなるのではないかという心配も出てきますが、いろいろな連携やルートづくりを行って、そういう中で流れを呼び寄せるということで、市場拡大のチャンスにもなり得ると思っています。