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次に、経営者についてですが、当初オープンした時は専務は自営業を経営していましが、会社の経営はすべて弟さんに委ねて、この「黒壁」に無報酬で常勤で勤めています。ただ、株式を店頭公開しなければならないということで、去年から役員報酬を払っている。このように当時、無報酬で携わる人間がいたということが「黒壁」の大きな成功の1つの要因です。

さらにまた株式会社「黒壁」は現在約100名の従業員を抱えていますが、男性は5人ほど、あとはすべて女性です。部長、課長はすべて女性なのです。

考えてみれば、ガラスを突き詰めていく中で、長浜の町の活性化を図ろうというまちづくりディベロッパー的な会社が「黒壁」です。

今日はこの「黒壁」の手法が三重県でできるかどうかというお話ですが、前置きはこのくらいにして、皆さんの忌憚のないご意見をお伺いしたいと思います。

○参加者

三重県では「黒壁」は成功しないと、結論を先に言われましたが、その理由はどこにあるのですか。

○清水

決して成功しないわけではありません。もちろん三重県でも伊勢市でも、地域のことに一生懸命携わっておられる方はたくさんいらっしゃると思います。ですが、「私の町が一番ではないか」という、我々の町にはそういった自負があります。今、イベント関係で寄付金を1億円集めています。これだけのお金が皆さんの地域で集まるかどうか。

そういった寄付金活動の多さを考えてみてください。私どものほうは事務局としてやっているだけですが、そういった寄付金を集めるだけの役員が一生懸命頑張っている。そこまでのことが皆さんの町で実際にできるかどうか。できるとおっしゃるのであれば、成功する要素はあると思います。

○参加者

今言われた寄付金のことですが、旧来からこういうスタイルで集めておられるのですか。また、すんなりとこれだけの金額が集まるものでしょうか。それとも「黒壁」が立ち上がってからそういう状況が生まれてきたのでしょうか。今までの経過をお聞かせください。

○清水

決して「黒壁」が成功したから寄付金集めもうまくいったというわけではありません。我々の町は全部で約1万7,000世帯ありますが、すべてのところに封筒を配っています。その中に寄付金を入れて出していただきたいと、そういったやり方をしているのです。つまり市民みんながお金を出すのだということです。これはずっと前からやっていることです。

これは、1つには、お金を出すことによって傍観者にさせないこと、イベントにしてもみんなができるだけ参画をしょうという意味を持ったやり方なのです。

「黒壁」が中心に展開しているということを、1つご紹介させていただきましょう。

昨年の秋からプラチナプラザというものを立ち上げました。これは一昨年、NHKの大河ドラマの「秀吉」に合わせて「秀吉博覧会」というイベントをやったことに起因します。その時にイベントのスタッフを集めるのに、若い女性が揃いの制服を着て、というのがよくあるパターンなのですが、我々の町では集めるのが難しかったので、スタッフ募集の合言葉を「青年男女を求む、ただし55歳以上」として、シルバースタッフを取り入れたのです。歴史的なイベントであること、そしてホスピタリティーを大切にしなければならないこと、外客を受け入れるということなので、歴史に造詣が深く、物腰が柔らかいご年配の方をぜひとも参画してもらおう、そういった先輩の知恵と一緒にやっていこうということが基本になりました。

このイベントは8ヵ月のロングランイベントでした。一生懸命やっていただく間に、町のことに関わる喜びと誇りと自信みたいなものがシルバーの方々に沸き上がってきました。

 

 

 

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