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分科会B<「黒壁」は三重県でも成功するのか?>

 

担当パネリスト 清水義康

 

○清水

「黒壁」は、今は株式会社「黒壁」といって、第3セクター組織で運営しています。資本金4億4,000万円、そのうち長浜市が1億4,000万円、残りの3億円を民間で出資しています。

長浜市は江戸時代から経済圏、文化圏として成立していました。長浜自体は小さな町ですが、その周辺の町から買物に来るという、特に商業機能の中心地でした。

昭和50年代から60年代の初めに、壁の外側が黒かったことから通称「黒壁銀行」として親しまれていたカトリック教会が郊外に移転することになりました。そこでその名物建築でを何とか保存できないかという話になったのです。そして民間からの出資で昭和63年4月に正式に会社として発足しました。

何をやるかという事業展開については、全く考えがありませんでした。地場産業をキーワードにしてみんなで検討しましたが、結局何も決まらなくて何カ月かが過ぎていきました。

そんな時に社長が「ガラスはどうか」と提案したのです。しかし、実際に長浜とガラスは縁もゆかりもありません。ただ、以前から我々の基本的なコンセプトとして、1]既存の業種とバッティングすることによって地場の店や産業がダウンしてしまう業種は避ける、2]外からお客様を呼び寄せられるものにする、3]大都市と大企業にはできないこと、の3つの視点を考えていました。さらにまた歴史性、文化・芸術性、国際性ということをテーマに掲げて事業を考えてもいました。だから、ガラスを取り上げた点では、長浜でなくても、全国どこででもできた事業だと思います。当然三重県でも成り立ったわけです。

現在、ガラスをキーワードに26店舗まで展開し、平成9年度ベースで157万8,000人の来訪者があり、経常利益4,800万円でした。

次に、今後の目標として第3セクターとしては異例のことですが、来年の秋に株式の店頭公開を行います。また、今年の4月に岩手県の江刺市に「黒壁」の店舗をオープンし、その一角にガラスを扱う店をすでにオープンしています。こういった形で、長浜で培ったまちづくりのノウハウを今後全国展開で広げていこうと考えています。

長浜の「黒壁」の経営の基本的な考え方としては、長浜だけがいいという状態は、あり得ないだろうから、日本全国全体を底上げして、その中でさらに長浜が段レベルアップするということを基本にやっています。

さらに、ガラスをキーワードに大学のガラス学科の誘致を進めています。また「黒壁」のある通りは北国街道という昔ながらの街道筋ですが、北国街道とオーストリアのラッテンベルグという町にある街道とガラス姉妹街道という形で提携しています。あるいは、ガラスの関係でベネチアなどにもいろいろな形で折衝を行っています。そういうことから世界戦略を図ろうと考えているのです。

「黒壁」のガラスももちろんですが、日本のガラスは、ヨーロッパとでは幼稚園と大学生ぐらいの開きがあります。今、とりあえずガラス文化をとことん追求していこうという姿勢で長浜のガラスはやっています。そういった中で、世界でガラスと言えばベネチアだ、チェコだ、長浜だと言われることを目標にしているのです。

 

 

 

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