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さらに、観光政策として力を入れている点は、新旧、つまり旧来の西ヨーロッパ、それから新しいアジア太平洋を含めての市場、そこからの観光客を何とか我が国のより内陸のほうにまで誘致しようということです。

そして、このような形で我が国政府はさまざまな措置を取ってきていますが、この中央政府が取っている戦略についてご紹介しましょう。第1点目は、世界的にグローバルな形でさまざまな観光振興の戦略を進めていることです。我が国にとってまず重要なのは市場の選択です。その意味で先ほど言ったように、アジア太平洋地域は我々の戦略の1つの中心対象地域であると言うことができますし、その中でも特に日本市場に向けていろいろな観光の促進を行っています。

最近の話題としては、政府観光局の事務所が新たに2カ所に設立されたことです。シンガポールとモスクワです。これによって東南アジア市場並びに東欧市場を狙っているわけで、今のところ、これらの市場の比重は大きくはないかもしれませんが、非常に大きな可能性が残されていると考えられています。もう一つの新しい市場となる東欧について見てみると、焦点をロシアとかチェコに絞って観光の振興に努力しています。

第2点目としては、より多様化を図るということ。先ほども申し上げたように、我が国に来る観光客の主な目的は、例えば太陽とビーチですが、それに留まらないで、それ以外に例えばいろいろな形の商品なり、あるいはより多様な市場を開発することによって多様化を図っていくというのが、現在、スペイン中央政府が取っている戦略の1つでもあるのです。

我々としては過去5年間の傾向を見て戦略をいろいろ変化させてきています。例えば私たちのスペインという国は、観光の中でも特に休暇型の観光、つまり太陽とビチを求めて西ヨーロッパからやって来る人たちのための観光という意味では、常にトップでした。そのトップという位置はそのまま維持をしたいと思っていますが、それとは別に新しい商品を開発することによってほかの要素も取り入れていきたいと考えています。また我が国にある観光資源をできるだけ効率的な形で開発・利用していきたいと考えています。

ここまでデータをいくつかご紹介して、それによってスペインが世界の観光の中に占める重要性や、スペインにとって観光は非常に重要であること、だからこそスペイン中央政府は観光に対して非常なる重要性を置いているという話をしてきました。それではその観光行政がどのように仕組みで機能しているかという、その組織の仕方について述べていきましょう。

まず、観光というのはスペインの副首相のもとに置かれています。ご存じかもしれませんが、スペインはほぼ連邦国家のようなものであり、つまり地方自治体の自治のレベルが高くなっています。スペインにおいては17の自治州があり、それぞれの自治州が比較的高い自治レベルを保っているのです。そして各自治州には観光を担当する局長が置かれています。対外的には各地方自治州の観光局と中央政府が協調して、さまざまな活動を行っているのです。

それから、スペインの民間部門もあります。観光にかかわる民間部門は、世界的に見ても非常にプロ的なものであると言うことができると思います。スペインの観光業界というのは、協会とか連合というような形で組織をされています。これは最初は政府に対して圧力をかける、ロビー活動をするようなものとして生まれたわけですが、今はスペインの観光を振興するにあたって、非常に重要な役割を果たしています。

以上のことから、行政の役割というのは基本的に2つであると言うことができます。

 

 

 

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