例えばどのような場所に観光客が宿泊しているのかということを見てみると、バレアレス諸島が41.4%、カナリア諸島21.9%、カタルニァ州15.7%、アンダルシア州11.0%、バレンシア州5.2%、そしてそのほかの12州の割合は5.6%にすぎません。
このような形で宿泊している場所が偏っているということを見てみると、まさにこれはスペイン全体が観光国なのではなくて、世界的にも重要な観光地域がたくさんあるということを示していると思います。
次に、季節別に見てみましょう。季節によってどのくらいの旅行者がスペインを訪れているかというと、第1四半期15.5%、第2四半期24.8%、第3四半期40.4%、この40.4が一番数字が大きくなるのですが、この第3四半期は7月、8月、9月に相当する時期です。そして最後の第4四半期が19.3%。季節変動が非常に大きいというところに、スペインが抱えている観光の問題が示されています。
今まで申し上げた数字に基づくと、主要な3つの課題が浮かんできます。その課題に基づいた形でスペイン政府はいろいろな観光促進のための政策をとっています。
まず1点としては、新しい観光目的地を振興するということ。今まであまり見られなかった観光地をさまざまな振興活動を通じて、新しい観光の商品として売り出すことによって開拓していくというものです。伝統的にスペインは太陽とビーチが売り込み筋でしたが、それにかわる新しいものの開発が望まれていますし、またそれと同時に新しい市場の開拓も必要となっています。今までは伝統的に西ヨーロッパからの観光客が多かったのですが、基本的に言って、東欧、そしてアジア太平洋地域という新しい市場の開拓が必要であると考えています。
第2点は、私どもの観光の品質を今後とも向上していくということです。例えば四つ星とか五つ星のホテルを利用する割合を高めるようにする。つまり、比較的豪華な観光施設をもっとつくっていく。同時にほかの観光用の補助施設もつくることによって、その観光地をより魅力的なものにするということです。例えばアンダルシア州にコスタ・デル・ソルという世界的にも有名な観光地があります。このコスタ・デル・ソルというのは「太陽の海岸」という意味ですが、ここにゴルフ場をたくさんつくって整備することによって、コスタ・デ・ゴルフ、つまり「ゴルフ場の海岸」という名前にまで変えてしまうような観光施設を建設しました。それによって、この地域の魅力を高められ、世界でも最良のゴルフ場がこのコスタ・デル・ソルにできるようになって、昨年は皆様もご存じのようにゴルフの試合が行われるまでになりました。
第3番目が、季節間の変動を少なくするための政策ということです。このために中央政府としては7月、8月以外の時期の観光を促進するためのさまざまな措置を取ってきました。先ほどのデータのように、7、8月期には観光者が年間観光者のうちの40%を占めるほど集中しています。それをどうするか。コスタ・デル・ソルの例を出しましたが、これに関しては中央政府からさまざまな金融支援等もあり、ゴルフ場以外のインフラの整備も行われました。それによってこのコスタ・デル・ソルは従来のバケーション型、つまり7、8月の夏休みを滞在するための場所であったものから、今や一年を通じて観光客が来るところになっています。
次に、過去5年間の我が国における観光の傾向を見てみると・次のような点が指摘されます。例えば先ほど申し上げたように、さまざまな観光の新商品あるいは新市場を開発するための努力を行ってきましたが、それにもかかわらず依然として観光客は主として欧州連合諸国の人々であり、約90%を占めています。ただ、最近新しく見えている傾向があります。それは特に東欧からの観光客が増加しているということ。具体的に言うとロシアとチェコからの観光客が増加しているのです。非常にうまく隙間市場を開発することができたと言うことができるでしょう。