しかし例えば水族館と同じ博物館施設である美術館の場合には、「展示内容によって入館者数が大幅に変化するので、一定のパターンを設定するのは困難」*23であるとされ、内容の変更によって通年型施設への脱却の可能性もあると考えられる。つまり積極的に集各ターゲットの明確化、基本コンセプトの変更、施設内容の変更などの戦略によって、観客属性や集客構造を変化させ、結果として季節性を完全に克服できないとしても、緩和することは不可能ではないと考えられるのである。以下では、これまで検討してきた観光需要一般、水族館全般の結果を基にして、季節性の平準化は戦略的に困難なのかを1987年7月にリニューアルオープンした須磨海浜水族園を事例として分析していこう。
4.施設のリニューアルと季節性の変化
1987年7月、須磨水族館は須磨海浜水族園へとリニューアルし、入場者数を前年度の63万人から240万人へと急増させた。拙稿(1997)は、須磨海浜水族園が大人をターゲットとした施設作りを目指し、結果として大人の入場者比率が、須磨水族館よりも高くなったことを明らかにした。このことは、施設がリニューアルを契機として基本コンセプトの変更、展示内容の変更等、経営戦略によって入場者数だけではなく、集客面での性格も変化させた可能性を示唆している。以下では、須磨水族館と須磨海浜水族園における季節変動に注目し、集各施設のリニューアルによる集各構造の変化について分析していこう。
差の絶対値合計=8.5ポイント
(出典)須磨水族館報昔8、須磨海浜水族園報告よ、須磨海浜水族囲提供の資料より作成
(注1)小数点第2位以下を四拾五人したので、比率の合計が100%にならない場合がある。
図表4-1は、須磨水族館(1981年度から1986年度)と須磨海浜水族園(1983年度から1993年度)の平均月別入場者比率を表したものである*24。この図表4-1をみてみると、入場者の季節性に関して両者に違いが生じていることが覗える。須磨海浜水族園は、一般に団体客もしくは学校関係が多く来館するとされる5月、6月と9月、10月の入場者比率を下げている。逆に団体客の少ない8月、閑散期とされる12月、1月、2月の入場者比率を上げている。
*23 岡田(1977)、p.157。
*24 1995年1月の兵庫県南部地震により、須磨海浜水族園は大きな被害を受け、1994年度から1996年度までその影響が残っている。したがって年間を通して営業を開始した1988年度から地震前の1993年度の6年関を分析対象とした。須磨水族館もこの年数に対応させるために、1981年度から1986年度の6年間とした。