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質問項目(2)の「冬季に入場者が少ない理由」に関する質問では、「寒さによる外出意欲の低下」「屋外施設による寒さ」といった気候・天候などの「自然的要因」を指摘した水族館が10館あった。また伊勢志摩地域に代表される「夏型観光地であることの反動」あるいは東北・北陸地域に代表される「東北・北陸地域の冬イコール雪といったマイナスイメージや雪による交通事情の悪化」などの「地理的要因」を挙げたのが9館であった。この「地理的要因」に関連して、水族館の観客属性としての「観光客中心か地元・周辺地域客中心か」によっても影響されることが指摘されている。寺泊町立水族館(新潟県)では、

「地元客はほとんど来ない。海の無い群馬県からの海水浴客が中心である」

と指摘し、観光客の来ない冬季には水族館の入場者も少ないことは当然であるとされる。観光客中心の水族館では、どうしてもその地域における観光入り込み状況に影響される*21。いわゆる観客属性によって、季節変動が決まると考えられている。さらに「水族館のもつ水・海のイメージが寒さを連想させるから」と、人々が水族館に対して持っているイメージ、つまり水族館自身の施設特性が冬季の集客にマイナスに作用していることを指摘した水族館が4館あった。水族館に対するこういった人々のイメージが、夏季の集客にプラスの働きをしていることの裏返しであり、施設に対する特定のイメージ形成が、年間を通した集客に有利に働く場合も、不利に働く場合もあると運営側では考えていることを示している。

 

*21 上越市立水族博物館では、年間入場者の40%以上が海のない長野県から来ている。

 

上記以外の理由として、「年末年始は様々な行事があり忙しい」といった「制度的要因」や「冬にはスキー・スケートなど、他のレジャー活動を行うから」といった他の観光行動との競合関係が、冬季に水族館への入場者が少ない理由として挙げられている。

次に「冬季に入場者が少ないことの対策」としては、「水族館単独では限界があるので、地域帯としてのイベントを企画する」と指摘した水族館が4館あり、地域観光全体の中で水族館の集客を考えて行く必要があると認識している。「入場者が少ない冬季を利用して講演会・室内楽コンサート・談話会などの参加型・体験型の催しや特別展を行う」など、水族館を身近に感じてもらう活動を行なっていくことを考えている水族館が5館あった。高知県立足摺海洋館(土佐清水市)では、体験型イベントとして「定置網便乗体験」「くじらウォッチング」「カツオのたたき料理教室」などを実施している。

 

 

 

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