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図表2-1 季節性の発生要因

制度的要因−学校の休み、祝祭日、お盆、正月、GW

自然的要因−気温、気候

地理的要因−高緯度・低緯度地域、海岸・山岳地域等

施設特性要因−観光施設の持つ性格

 

自然的要因とは、二つの側面を持った要因である。第Iは、同一地域内での気温・気候の変化に基づく要因である。例えば、気温の低い時期よりも気温の高い、もしくは穏やかな時期、あるいは雨の多い時期よりは晴天の多い時期に人々の観光行動が生ずるということである。

これに対し第IIは、異なる地域間の地理的状況の変化に基づく要因のことである。例えば、高緯度地方の寒冷地域では、ウィンタースポーツを目的として冬季に観光客が集まり、逆に低緯度地方の温暖地域、特に海岸部の海洋性レジャーが中心の地域では、夏季に観光客が集まる傾向を示していることなど、地域特性に基づく要因のことである。

Uysal et al (1994)は、全米各州*11における観光需要の季節性の分析において、地域毎に季節によって、目的地になったり、他の場所へ行くための通過地になったり、需要の発生地になったりすることを明らかにしている。つまり地域毎、地理的条件によって年間を通して特有の季節変動を示していることになる。以下本稿では、こういった自然的要因の第IIの側面を「地理的要因」とし、需要の季節性の第3の要因として議論していく。

 

*11 アラスカ州、ハワイ州を除く48州が対象となっている。

 

さらにJeffrey & Hubbardが行ったホテル業に関する需要の季節性の研究では、ホテル自身の分類属性、つまりリゾートホテルなのか、ビジネスホテルなのか、によっても季節性のパターンが異なることを指摘している。Phelps(1988)も、観光対象の性質によって季節性が異なると指摘している。これは第4の要因として「施設特性要因」として分類することが可能であると考えられる。以下では、これら4つの要因を「外性的要因」とする。

先行研究では、需要の季節性によって生じる経営上の問題点が指摘されており、また季節性が発生する要因に関しても一定の合意が形成されている。そして「観光産業の安定的成長のためにはこのような季節性から脱却し、通年型経営を目指すべきである」と指摘されてもいる。しかしその対策に関しては、料金設定の変更が具体的に提示されているにすぎない。戦略は外性的要因をくつがえしたりするのではなく、補足的な位置付けでしかなかったことが示唆されている。

 

 

 

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