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しかし水族館あるいは博物館施設の発生需要の季節性に関する研究は少ない。データは古いが、須磨水族館の職員が行った1960年度の近畿圏の博物館施設の需要の季節性についての調査報告*7を見てみると、動物園、動植物園遊園地混合施設では、4月、10月に大きな需要の山があり、水族館には5月、10月に加えて8月にも需要の山がある。これは、水族館以外は基本的には屋外施設であり、夏の暑さを避けられないからではないかというのが理由の一つとされている*8。また4月、10月は学校行事としての校外学習の時期であり、特に動物園の場合には、遠足の団体が多い事も関係しているのであろう。広い動物園内には、桜が多く植えられている場合もあり、春の花見の時期とも関係していることも予想される。

 

*7 詳しくは「須磨水族館報告1」内の有本他(1960)、p.81〜87を参照のこと。この調査報告は、学術研究ではなく、また40年近く前の報告であり、周辺地域の競合施設や観光行動に対する人々の考え方も変化していることが予想されるので、本稿ではあくまでも参考程度の扱いにとどめる。

 

*8 「須磨水族館報告1」、p.85。

 

この調査報告では、水族館、動物園、動植物園遊園地混合施設を、季節変動によって、都会地型、観光地型、都会地観光地混合型に分類することを試みているが、都会地、観光地の定義は必ずしも明確ではない。

岡田他(1977)は、「美術館・博物館では比較的季節変動が大きい」とし、「美術館の場合には、3月と11月に極端なピークが見られる」としている*9。博物館に関しては、大阪の電気科学館を事例にして、「8月のピークは夏休みの児童が入場するためであろう」と述べている。さらに岡田他は、「動物園・遊園地などの屋外施設では季節変動が厳しく、特に春と秋に需要が集中する」とも指摘している。春と秋を比べると、春の需要の方が大きいのは、ゴールデンウィークの存在や、冬に閉じ込められていたことからの開放感をその理由として挙げている*10。この他には、春は桜の時期でもあり、動物園では子供が多く生まれる時期であることも、これらの施設に出かける誘因となっているとも考えられる。

 

*9 和歌山県立自然博物館長太田氏は、美術館・博物館で11月に需要のピークがあることに関して「美術品や工芸品等は湿気を嫌うので、他館から借り入れて特別展を行うときは、展示品が傷まないように、気候の安定した11月頃に行う」と説明している。

 

*10 岡田(1977)、p.157。

 

2.4 まとめ

 

以上の先行研究から、観光需要および博物館施設の需要における季節性は、図表2-1に示したように、主として4つの要因によって発生していると考えられている。第1は「制度的要因」であり、第2は「自然的要因」である。

制度的要因とは、学校休日、祝祭日、お盆、正月などの社会制度・慣習として制定された要因に依って観光需要の季節性が生じるというものである。

 

 

 

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