Hartmannも、季節性は「社会的に典型的な行動様式、つまり1年のどの時期に休暇旅行のための自由時間をどのように使うか」に大きく関連しており、「祝日、とくに学校休日が、年間のどのタイミングに旅行や休暇を取るのかに強い影響力を持っている」と述べている。さらに西側の工業国では、夏およびクリスマス、イースターを挟んでその前後に休暇をとることが一般的であり、季節性が生じる要因となっていることを指摘している。
Jeffrey & Hubbard (1986)は、ホテル業における季節性に関する研究において、「季節変動の大きさとパターンは、ホテルの立地、対象とする顧客市場、ホテルの種類に関連している」と述べている。ホテル業では、ビジネス客、短期滞在客、長期滞在客によって、需要が集中する時期が異なるとされる。したがってこれらのうち、どの顧客が多いのか、つまり施設特性によってホテル全体の需要の変動パターンが違ってくるとも指摘している。
我が国においては、小谷が指摘するように、「観光需要は春季・秋季の行楽季節や夏季の盆休み、あるいは年末から正月にかけての冬休みなど、古くからの慣例的行事や風習に影響されて発生需要自体が季節性をもつ」*5などとして、制度・習慣などが、季節性発生の主たる要因であるとされる。小沢も観光需要の季節的変動は、天候、休暇の時期、種々の活動の季節性に依存して決まると指摘している。
*5 小谷(1994)、p.126。
2.3 季節性に対する戦略
需要の季節性による経営上の問題が指摘され、通年型観光への脱却を図るべきであるとの考えでは研究者の間にほぼ一致した見解がある。また季節性発生の要因に関する分析も行なわれているのであるが、Allcockが指摘しているように、どうずれば季節性を克服できるのかについての経営戦略面での分析は必ずしも十分ではない。
Manning & Powers、Jeffrey & Hubbard、小沢は、観光需要の季節変動を緩和する対策として、混雑期と閑散期における料金の弾力的な適用、つまり価格戦略、施設の場合の営業時間の弾力的な運用、閑散期の団体客の誘致などを提案しているが、施設内容の充実、ターゲットの絞り込み、基本コンセプトの変更等は、必ずしも重視されていない。
2.4 観光関連施設の季節性に関する研究
一般の観光需要以外にも、「本質的に季節性がないはずの文化財系の観光地でも、発生需要の影響を受けて春と秋の行楽期がピーク・シーズンとなり、夏と冬はオフ・シーズンを余儀なくされる」*6のであり、博物館施設などでも需要の季節性が生じるとされる。特に水族館は「水」に関するイメージを思い起こさせる施設であり、夏に需要のピークの一つがある可能性が想像できるであろう。さらに社会教育施設であると同時に観光的要素も併せ持つ施設であるため、春・秋の観光シーズンにもピークが存在しているのではないかとも予想される。
*6 小谷(1994)、p.127。