日本財団 図書館


第2点は「他の旅行者との出会いを強く求める」である。現地の人々とのふれ合いはもとより、旅先での予想もしていなかった出会いを求めるのは観光の本質でもある。またバックパッカーは自分たちが体験して得た情報を口伝えで伝え、その行為によって彼らは得た経験を生きたものにし、更なる旅のインセンティブとして旅を続けるのである。

第3点は「独自で柔軟な旅行計画を立てる」である。これはバックパッカーの基本要素である。現代では個人の趣味の多様化などからあらかじめ決められた行程によって旅をするのではなく、自分だけの旅づくりを行う。その為には柔軟な旅行計画が必要となる。

第4点は「比較的長期に渡って旅をする」である。一度の旅で複数の目的地を設定すれば必然的に長期に渡り、また元々バックパッカーの特徴から長期に渡って旅をすることは必然であるからである。

第5点に「積極的にアクティビティーに参加する」が挙げられる。マス・ツーリズムによる団体旅行客が参加しないような現地アクティビティーや環境への理解・学習を通じてのエコツーリズムなどに参加することで独自の旅をつくり、そこで地元の人々との接触をはかり、そこでの経験から学習したりしているのである。

Pearceは以上5点をバックパッカーの定義付けにあげている。Pearceによって初めてバックパッカーが研究対象とされてから、モナシュ大学のJarvis教授も彼の著書The Billion Dollar Backpackers*25においてバックパッカーの定義付けを述べている。それはPearceの第1点と第3点の定義付けと「旅行中少なくとも1泊をバックパッカー・ホテルあるいはユース・ホステルで宿泊すること」としている。このJarvisによる定義付けは、Pearceでは定義に加えていなかった、少なくとも1泊という実数を加えることでもっとも凝縮された定義になると彼自身述べている。しかしこれでもバックパッカーを統計上に表すための定義付けとしては不確定要素が多く、把握しにくいものであった。そこでBureau of Tourism Research (BTR)ではバックパッカーの定義を「少なくとも1泊をバックパッカー・ホテルもしくはユース・ホステルで宿泊したもの*26」とし、バックパッカーを統計上に公表した。もちろんこれだけの定義付けによってバックパッカーが把握されることになると、統計上の数値がバックパッカーの実在数から乖離することは免れない。しかし現状においては潜在的なバックパッカー市場を理解することにあるため、このような定義によってバックパッカーを把握することはやむを得ないのである。

 

*25 Jarvis, J., The Billion Dollar Backpackers: The Ultimate Fully Independent Tourists. Monash University, Australia, 1994, p.5.

 

*26 Australian Tourist Commission, Backpacking; It's a State of Mind Austrarian Tourist Commission, 1995, p2. またバックパッカーの定義において、「少なくとも1泊」としているのは、世界観光機関(WTO)の観光客の定義「訪れた国に少なくとも24時間に渡って滞在する時的な訪問客でその目的がレジャー、商用、親族訪問、伝道、会議などである」を用いているものと思われる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION