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第4節 第三動機(ユース・ホステル:Youth Hostel)

 

ユース・ホステルの動きというのは19世紀ヨーロッパでの産業発達によって生じる、都市生活下で生じる疲労、ストレスなどを癒す運動としてはじまり、特に若者にレジャー、未開地域に対する美しさの発見など旅を通じて健全な精神を育成しようとしたのである。まずそのような兆しはイギリスにおいて見られ、低廉な宿泊施設を提供する施設として1844年にYMCA(Young Mens Christian Association)と1855年にYWCA(Young Women Christian Association)が設立された。またドイツ語圏内のヨーロッパにおいては「ホームランド・アンド・ランプリング」というクラブができ、山を鑑賞する山歩きがはじまり、その道沿いには宿泊施設、休憩所などが開設され、山の地図や案内書が出るようになった。さらに20世紀になるとドイツにおいて「ワンダーフォーゲル」の精神がひろまり生活上にまで影響を及ぼすほどにその概念が定着した。1909年にドイツの小学校教師がビレッジ・スクールを休暇期間中に簡易宿泊施設として使用する許可を得たことを始め、これを機に翌年、地元自治体に古城を世界最初の永続的ユース・ホステルとして設立することを申請した。これがドイツより発祥したユース・ホステル(YHA; Youth Hostel Association)の起源である。その後、その運動は世界に広まり宿泊利用日数は1919年で6万日、1920年には18万6,000日を記録し、1932年までに2,124ヵ所にユース・ホステルが設けられ450万日の利用があった。これと共に1908年に発足したボーイ・スカウトや1910年発足のガール・ガイド協会なども発展して、健全な精神の育成、社会活動が国境を越えて行われているのである。

このような特徴を有するバックパッカーは「社会活動型(social/excitement seekers)*10」と表現することができる。

 

*10 Loker, L., op. cit., pp.8-12.

 

第5節 第四動機(放浪者:drifter and long-term budget traveler)

 

20世紀初頭には、個人の休暇体験の多様化、好奇心の高まりによって、もはや旅の目的地は一ヵ所にとどまらず数ヵ所に渡るようになった。そうなると彼らの旅行は必然的に長期に渡るようになり、支出額も増加し、観光ニーズも多様多岐に渡った*11

 

*11 Lue, C., Crompton, J., and Fesenmaier, D., Conceptualization of Multi-Destinations Pleasure Trips, Annals of Tourism Reserch, Vol.20, 1993, pp.289-301.

 

 

 

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