天候の変わりやすい山の雲行きを飛行中のヘリコプターに伝え事故を防ぐ取り組みを、運輸省が8月から始める。計器を頼りに飛ぶジェット機と違い、小型機は視界不良から事故につながるケースが多い。最新の自動気象観測機を峠に置いて、雲の厚さや視程などのデータをリアルタイムで操縦士に伝わるようにする。効果を確かめ、実用化したい考えだ。
航空用の観測機が設置されたのは、静岡県三島市と神奈川県箱根町にかかる箱根峠。地上にある観測機が、雲がどの高さにどれくらいあるか、視程は何キロか、どのくらいの突風かを測る。
観測機に電話をかけるとデータを音声で再生する。操縦士は飛行前に直接電話で情報を得る。飛行中には運航会社に電話をかけてもらい無線でこれから通る山間部の雲行きを知ることができる。
定期航空のジェット機は計器を使ってレーダーの案内で飛ぶが、ヘリコプターやグライダーなど小型機は、操縦士の目が頼りだ。アメダスや天気概況は参考にはなるが、一番重要な雲の量や視界はわからない。
操縦士らは、急激に変わる峠の空模様の情報をドライブインの店員や有料道路の料金所の職員と知り合いになってもらっているのが現状だ。
それでも、急激に天候が変わる峠越えの操縦は難しく、岐阜県の関ケ原、山梨県の笹子峠などが難所とされている。1990年、91年にはヘリの事故死者が計50人に上るなど、安全対策が求められていた。
運輸省航空局の担当者は「有視界飛行で飛ぶ小型機に重要な航空気象情報はこれまでなかった。まず、実用化できるめどをたて、将来は衛星通信などで直接ヘリに情報を伝えられるようにしたい」と話している。