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(3) 処理時間

次にこの一連の処理のタイミング設計結果について述べる。

図4.3.1-5はユニークワードの相関処理に関するタイミングチャートである。相関処理には上記のフローチャートで示す相関処理をシリーズで行う場合とパラレルに行う場合がある。図中網掛けの部分は受信シンボルを分析できる時間を示している。シリーズ処理の場合は全時間に対し、約50%の時間が検出可能である。

これに対し、設計したパラレル処理の検出時間率は約71%となった。

モード2の場合、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)は、キャリア検出をトリガとしてユニークワード検出処理を開始する。この場合、基本的にはシリーズ処理で十分と考えられる。

一方TDMAの場合、タイムスロット開始タイミングから処理を行う必要がある。このなかで、伝搬遅延とクロック誤差を含む受信タイミングの変化に対応する必要がある。SARPsの標準レンジでは13シンボルに200NM相当)、拡張レンジでは39シンボル(600NM相当)の伝搬遅延が規定されている。このため、パラレル処理により検出可能時間の延長を計った。モード2方式ではバースト受信後約25シンボルをサンプルしているが、本方式により最大65シンボルに相当する期間に到着するユニークワードを検出可能となった。

現在のモード2装置は、25シンボルのデータ取込に2.38ms、50シンボルの相関処理に2.02ms掛かっており、全体で4.4msの時間を要している。シンボルの取込よりも相関処理にかかる時間が短いのは、取込速度は変調速度である31.5kHz以上にはならないが、相関処理は内部クロック周波数を上げることで短縮できるからである。

モード3の場合、S1系とS2系の処理を実施するため相関処理時間が2.02ms増加する。また、パラレル処理に必要なオーバーラップ時間を1.8msに設定し、シンボルデータ取込時間を4.76msとした。ユニークワードは1.52msであり、オーバーラップ時間1.8msはこれをカバーする。

通信相手の双方が、ネットに正常に同期している場合、受信バーストはTDMAスロットに同期しており、シングル処理で検出できると考えられる。しかし、電波途絶等によりクロックが維持できない場合やネット加入時の基準バースト探索時を早めるため、同一の回路を2系統用いたパラレル処理を採用した。

この場合、現在のDSP能力ではパラレル処理用の第2番目の相関回路を同一DSPに内蔵することができない。このため、2ヶのDSPを使用する構成とした。将来、素子のスピードの向上によっては、同一のDSPへ格納し、ハード構成をコンパクト化できる可能性があると考えられる。

 

 

 

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