日本財団 図書館


(6) 高周波系の変更

本設計は変調部及びTDMA制御部が主な対象であるが、高周波部のなかで、CSMAからTDMAへの変更に伴い影響を受ける部分について検討を行った。尚、高周波出力のRFマスクに関する改善がICAOの場で検討されている。しかし、現時点では結論を得るに至っていない。このためRFマスク性能は従来のモード2と同一とした。

 

4.1.4 設計結果

 

以上の方針を受けて実施した詳細設計の結果を報告する。

(1) ハードウェア構成と試作対象

現在のモード2にTDMA制御部を追加するとともに、変復調部、高周波部の変更を検討した。TDMA制御部は新規に設計し、その中心部であるTDMAボードについて試作した。変復調部についてはモード3としての追加機能を追加する為の設計パラメータを詳細に検討した。特にユニークワードの複数化と処理時間の短縮について設計した。高周波部については、現状のモード2対応機材をモード3に流用する上の課題を抽出し、変更方針を検討した。

(2) トランシーバー方式の採用

航空無線の地上局は、複数の周波数間の干渉を避けるため、送信サイトと受信サイトを分離する場合が多い。しかし、本試作システムではモード3の基本機能を確認する事が主な目的であること、また、Mバーストに関して受信データと送信データが密接に関係することにより、受信機能と送信機能を同一のハードウェアに内蔵するトランシーバー方式とした。

また、内部に使用するDPUボード、APUボード等は変調用と復調用に分離し、将来の送受分離に備えた。

(3) 全体系統図

図4.1.4-1に本試作システムの全体系統図を示す。

図中点線で囲われた部分がVDLモード3設計検討対象部分である。FANS構想によるVDLの役割は、ATNプロトコルに対応したデータ通信を行うことである。モード3の役割は、そのリアルタイム性を生かし、ATC音声及びCPDLC等を行うことが可能なリンク手段を提供することにある。今後、バリデーションの結果により対象となるアプリケーションが選択されていくと考えられる。図4.1.4-1は、基本的な運用構想に基づく全体系統図を示している。管制官から入力されたデータはATNルーターを経由し、セクター毎のVDLセンターに入力される。センター局は、適切なVDLラジオを選択し、対応する通信制御部へデータが送られる。通信制御部は、TDMA制御部へデータを受け渡し、TDMA制御部では作動中のシステム構成に従いデータを変調部へ送出する。

変調部はTDMA制御部が発生するスロット・タイミングに同期し、D8PSK変調を行いIF信号として高周波部へ送出する。最後に、高周波部はIF信号をアップコンバートし、公称15wのVHF帯RF信号として送信する。一方、図4.1.4-2は機上装置の全体系統図である。このなかで、点線で囲まれた部分は地上装置と同一である。本設計のトランシーバ装置は機上装置と地上装置の共通部分ということができる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION