それ以後、特に日本を中心として、軍事力を表面的には認められなかった日本、あるいは軍事力を放棄することを余儀なくされた日本を中心にして、アジアの国々が日本型モデルを追いかけるという形で展開されたのがウエルスゲーム、富のゲームであったと思います。これは、経済力を主体とした形でありまして、しっかりとした産業をもって貿易を盛んにすれば、どこの国でも発展できるというウエルスゲームが、この戦後50年間というもの、あるいは冷戦構造の間に日本が展開したゲームであり、また、それを追いかけて、大きな領土をもっていない、資源も余りたくさんないアジアの国々が、半世紀後にはアジアの繁栄というようなもの、あるいはアジアの成長ということで評価されるような時代が来た。これは、まさにウエルスゲームというのが、その時代の戦略であったと私は考えております。
現在では、そういうウエルスゲームというものが世界的に認められて、日本のような形、あるいはアジアのような形でやれば、どの国も発展できると考えられるようになってきた。そしてまた、物や金や人や情報というものが国際社会の中でグローバルに展開される。あるいは、世界が入り組んで相互依存的になるというような状況が出てきているわけであります。ウエルスゲームは、どこの国でも踏襲している戦略であります。
そしてグローバリゼーションの時代になり、まさに現在、新たに始まっている世界史の状況・現代的な特徴というものは、アイデンティティーゲームであろうと私は考えております。これは、かつての軍事、経済に対して文化を主導とした戦略になっているだろうと思います。
文化というものは、文明とは違いまして、民族の生きる形であると思います。文明は滅びますけれども、文化は基本的に滅びません。今後は文化というものが、これからの世界史を大きく動かしていく基本的な基軸になっていくだろうと思います。グローバル化していく世界の中だからこそ、その民族はどういう方向に動こうとしているのか。その国の固有の形は何なのかということが問われている時代なのであります。経済的な成功、あるいは自分たちが富をもつようになって、何のために生きているのか、その民族は生きる形の固有性をもっているのかどうかということがはっきりしない国は、多分、この世界史の中で、1つの地域に豊かな地域があるという形で埋没していく、あるいは消滅していく、地域としてしか存立し得ないという状況になってくると思います。
この民族の生きる形については、最後に頼むべきものは何なのかという形で問題提起されるのではないかと思います。この点について、佐藤先生は、レポートではっきり触れられておられませんので、今日、その点をひとつ議論できればと考えております。
今の問題にまさに絡む問題として、第2番目の問題です。日本において、最後に頼むべきものなどというのは決まっているではないか。それは、世界で唯一、天皇制をもっている国であるというように、かつての日本であれば、前提として考えてよい問題であったわけであります。この問題は、世界第2の経済大国となって、プレゼンスとしては非常に大きい意味をもっている日本が、日本の固有性とは何かといわれたときに、天皇制と答えることはできないという問題であり、あるいは天皇制と答えて失敗したのが、この間の大東亜戦争であったと捉えることができると、私は考えております。