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○モデレーター

ありがとうございました。

今、おっしゃり切れなかったことは、次の段階でさらに付言していただければありがたいと思います。

第3次産業革命を迎えて、これから混乱が始まるという問題提起であったかと思いますが、前世紀末の問題、あるいは今世紀初めの問題とのイメージを抱き合わせてみますと、この次の混乱が一体どの程度、どういうものになるのか大変心配になりますが、この点について後ほどまたご議論していただければと思います。

次に、山内教授にお願いしたいと思います。山内教授は、ご承知のとおり、東大の総合文化研究所の教授として、特に中東、あるいはモスレム問題等に大変すぐれた研究成果を発表しておられます。我々の主題であります国家、あるいは国民について、ご専門の中東なり中央アジアとの関連において、いろいろコメントをしていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

○山内

山内でございます。佐藤先生はご報告の中で、国家の多様性について、特に田中明彦教授の第2類型、第1類型ということなどとの関係でも述べられ、国家といいましても、いろいろな性格のものがあるということを、英語による表現を例に、巧みにご説明されました。

私は、問題になっている先進民主主義諸国というものに対する挑戦的要素として、例えば攪乱的な要因というものが来世紀に向けて国際関係でどのように立ち上がるのか、むしろこの点あたりについて触れることによって、先進民主主義諸国のあり方、あるいは日本の進路などにかかわるような問題について、逆照射するような形でコメントしたいと思います。

中でも、手がかりになりますのは帝国という概念でありまして、きょうのご報告の中で、普遍性の強い特定の文明を共有する広大な領域、権力地帯をエンパイアと呼ぶというご説明がありました。実は、このエンパイアというものをみずから自己完結的にもち、あるいはそれを文明論的な要素として自負しているような存在が、先進民主主義諸国のあり方に対して異議申し立てをするという構図が、今後、考えられるわけであります。

その大きな可能性として挙げられるのは、1つは中国でありまして、1つはイスラムということになります。もともとイスラムというのは、もちろんイスラム国家というものが1つの国家として現実に存在しているわけではありませんが、国家を超越する精神的な共同体の広がり意味する言葉・考え方として、ウンマというものがあります。しばしばイスラム型の国家においては、現存する国境というのは西欧の政治体系によって与えられた人工的なものであって、最終的なものではない。したがって、現実を超越するある精神的な共同性が、現実的な共同体を転化しなければならないという考えを強くもつ人々がいます。それが、ある種の突然変異体として出てきたのが、サダム・フセインなどによるクウェートの併合というようなことにもいくわけであります。

 

 

 

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