中国が情報革命において、アメリカや日本を追い抜くということはちょっと考えられない。すべてがうまくいった場合でも、GDPのサイズが日本に並ぶとかということは起こり得るかもしれませんけれども、それ以上に、技術革新の面で日本やアメリカを抜くということはちょっと信じられない、考えられない事態であると思います。
それから、先進民主主義国というのは、事実として現状維持的である。国際関係の現状について比較的満足している。したがって、それは、その意味で平和的であるということがいえます。ですから、政治的安定と経済的な豊かさと平和の維持という人類にとって非常に重要なこの3つの側面において、世界において特別な役割を果たすことが運命づけられているのは先進民主主義国であると思います。しかもそれは、アメリカ一国ではとてもできないと思います。産業化が普及すればするほど、いわゆるヘゲモニックスタビリティーというのは到底維持できない。それにかわるものは、先進民主主義国の間の協力関係だと私は思います。これも、いわば常識に属することであると思います。
時間が限られていますので、最後に、日本の役割ですが、日本は先進民主主義国の一員ですから、今いったような3つのことを特に強調すべきでありますけれども、その中で、安全保障の面でいうと、アジアにおける唯一の先進経済大国である。しかも、西太平洋からアジア、さらにインド洋にわたる広大な地域において、その軍事的プレゼンスがほとんどの国にとって歓迎、ないしは極端な敵意を生み出さないという国はアメリカしか事実としてありませんが、そのアメリカに対して、アメリカが期待するほどの十分なホスト・ネーション・サポートやロジスティックサポートを提供する能力をもっている国は日本しかありません。したがって、西太平洋からインド洋、湾岸に至るこの広大な地域において、日米同盟を中心として日本の安全保障上の役割は極めて大きい。但し日本の現状がそれに対応する形に熟しているかという問題は別問題であります。
2番目は、日本は先進民主主義国の中で例外的に欧米的な文化的、歴史的背景をもたない点であります。したがって、マーケットエコノミーやデモクラシーについての多様性を説得するのには極めていい立場にある。日本がそういう点で、いかに多様なマーケットエコノミーや多様なリベラルデモクラシーが共存し得るかという点について知的イニシアチブを発揮しなければ、ほかの国はもっと発揮しにくいだろうと私は思います。
3番目は、日本は軍事的な貢献は極めて限られておりますので、東アジアを中心とした経済的な貢献は特に果たす必要があると思っております。
ちょっと時間をオーバーしてしまいまして申しわけございませんでしたけれども、以上で私の非常に簡単な最初のプレゼンテーションを終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました(拍手)。
○モデレーター
佐藤教授、ありがとうございました。
国家という問題を取り上げて、特に先進民主主義国の役割を歴史的にご説明いただくとともに、その関連において、アジアにおいて唯一ともいうべき先進民主主義国である日本の役割について、極めて包括的、しかも明快なご説明をいただいてありがとうございました。