私ども世界平和研究所におきましては、地球化社会における日本のアイデンティティーという問題をテーマにして研究活動を進めておりますが、その中で、日本のアイデンティティーというのは一体何であろうか。そしてまた、日本の改革に向けた座標軸としてどういうものを設定したらいいのであろうかという問題意識のもとに、「地球化社会における日本」と題しまして、本日、公開のシンポジウムを開催することにしたわけでございます。
ご案内差し上げましたように、きょうは世界平和研究所の佐藤研究主幹を問題提起者とし、国際大学の公文教授、東京大学の山内教授、そして麗澤大学の松本教授のお三人をパネリストとしてお迎えすることができました。後ほどまたご発言の前にご紹介いたしたいと思いますけれども、それぞれのご専門の立場からみまして、今、申し上げましたような国家、国民、あるいは市民、それぞれが一体何を意味し、相互にどういう連関をもっているのか。そして、21世紀にどういう新しい問題が生じるのであろうか。また、その間において、情報化の問題をどのように考えたらいいのか、このような視点に立ってご議論をいただきたいと考えております。
最初に、佐藤研究主幹から、約20分間、21世紀における国家の役割、その中でも、日本を中心としてというテーマでお話をいただき、引き続いてパネル討議に移りたいと思います。
佐藤教授は、ご承知のとおりに、東京大学に長くおられ、現在は政策大学院の副学長をしておられますが、世界平和研究所といたしましては、創立以来、研究主幹として大変ご活躍をいただいているわけでございます。
それでは、佐藤さん、お願いいたします。
○佐藤
今、ご紹介いただきました佐藤でございます。
私に与えられましたテーマは極めて大きなテーマで、20分で話すというのは無理でございますので、ペーパーを用意いたしました。ペーパーがあまり長くてはかえって皆様にご負担だと思って、9ページのものをお手元にお配りしてあると思います。さらに、このペーパー自身が極めて大きなテーマについてのごく限定された側面だけを問題にしているものでございまして、それ以外に論ずべきものは、実は山のようにあると思っております。ただ、時間の関係もございますので、私がこのペーパーで特に強調したかった点を、このペーパーを読み上げるという形ではなくて、申し上げたいと思います。
私が特に強調したいと思いましたのは、まず第1は、国家というのは一色ではないということでございます。日本で国家の役割を論じるときには、もう国民国家の時代は終わりつつあるというような議論がなされますが、それは先進民主主義国を念頭においたものだと思います。先進民主主義国というのは、経済的に豊かさを達成したリベラルデモクラシーの体制をもった国という意味です。つまり、インドは、リベラルデモクラシーではありますけれども、豊かさは達成していないので除かれます。