日本財団 図書館


シンポジウム

『地球化社会における日本』

 

○モデレーター(大河原)

お待たせいたしました。定刻を過ぎましたので、きょうのシンポジウムを開催いたしたいと思います。

私は、世界平和研究所の理事長をしております大河原でございます。世界平和研究所は、昨年創設10周年を迎えまして、おかげさまで各方面のご支援を得まして、いろいろ活発に事業活動を行ってきております。本日、年が明けまして初めてのシンポジウムを開会するということにいたしましたところ、大変お寒い中、また風邪がはやっている中、お忙しい中をこのように多数ご参加いただきまして、ありがとうございました。

ことしの一月一日にユーロの誕生という大きな出来事がありましたけれども、ヨーロッパが進めておりました経済の統合が、ユーロという単一通貨の採用により一つの大きな時期を画したといってよろしいと思います。このことは、将来ヨーロッパが、さらに政治統合に向けてより新しい段階に進んでいくのか、あるいは連邦化というような事態が生じるのか、いろいろな問題をはらんでおりますけれども、いずれにしても、EUという存在が固まっていき、大きくなるにつれて、国家というものは一体どのような存在になっていくのだろうかという問題を投げかけているように思います。

また、その間、グローバリゼーションという大きな動きが進んでおりますが、一昨年七月に始まりましたいわゆるアジアの経済危機というものも、グローバリゼーションの陰の部分を示しているのだという指摘もございます。いずれにいたしましても、冷戦が終わりましてから、情報通信技術の発達等を背景にいたしまして、政治、経済、社会の各分野でグローバリゼーションが大きく進展しております。現在は、産業革命と匹敵するような、あるいはそれ以上に影響のある情報革命が進行中であり、21世紀を目前に控えました現在、ますますその変革のスピードを速めているように思います。

国家間、国際関係におきましても、相互依存の度合いはますます進んでおりますが、情報伝達が飛躍的に迅速化した現在は、「地球化社会」とも呼ばれるような時代になっているように思います。「地球化社会」ということは、一つには多国籍企業の活動など経済活動の国際化によりまして、経済制度として既成の国家の枠を超えた統一的な基準を求めることになり、二つには資本の流動化が更に進展し、そして三っつ目にインターネット、衛星放送等による情報の共有化等、国境を越えた経済及び文化活動を盛んにするものであり、これらの結果、国境のもつ意味というものも大きく変わってきているように思います。

このことは、物理的だけではなく、文化的、精神的にも、国境の垣根の低下という事態がナショナルアイデンティティーの希薄化をもたらす可能性をもっていることを意味すると思います。現在の我々は、ナショナルアイデンティティーとは一体何かということを改めて問いかけざるを得ない状況にあると思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION