一方、東アジアの金融危機は非常に深刻で複雑な問題であり、東アジアのすべての社会が金融危機の悪影響を受けている。そのためアジアでは金融危機の原因は"西洋"にあるという考えから、西洋に対する怒りと批判が高まりつつある。特に唯一の超大国であるアメリカへの怒りと批判が高まっている。これまで金融危機に対し、2通りの反応が見られる。一つはIMFとG7のアドバイスに従い、自由主義的資本主義に基づきグローバル経済への関与をさらに高めようというもの。もう一方はマレーシアが9月に行ったような規則の遵守や金融機関の閉鎖を拒否することである。この対応は一時的なものでると考えられる。マレーシアが行った実験的措置を詳しく研究する必要がある。香港はマレーシアほど劇的な方法ではないが、市場介入を試みている。両国とも国民を窮地に立たせ、絶望させている金融危機を克服しようと努力しているのである。両国が金融危機の解決に成功するかどうかで、今後の国際経済システムの動向が部分的に決定されることになろう。
東アジアでは金融危機にもかかわらず、大多数の経済は開放政策を維持している。ヨーロッパとアジアはこうした開放政策を成功に導くという共通の課題を負っている。この課題の結果は世界に大きな影響を与えるため、ヨーロッパとアジアは協力することが不可欠である。
四番目にアジアとヨーロッパは、グローバライゼーションが緊急に対応すべき新たな課題を生み出していることを認識している印として、具体的な努力を示すべきである。
ロンドンで行われたASEMIIで具体的な協力のための努力について合意されたが、これは良いスタートであり、この努力をさらに拡大すべきである。特にヨーロッパがアジア経済に調査、研究、トレーニングの分野で協力することは非常に重要であり、多額の資金を要せずにただちに実施することができよう。この"ノウハウ"のパッケージの例を、数例挙げてみる。
・ 多様な福祉の実施方法に関する情報ネットワークを開発する。福祉提供者、特に地方自治体と非政府機関の福祉提供者のトレーニングを特に重視すべきである。
・ 弁護士、判事、新しいメディア、司法システムにかかわるNGOに関する情報ネットワークを開発する。汚職の問題に焦点を当てることもできるし、民間経済部門と密接な連携を図り実施することもできる。
・ 環境保護の最適な実施方法に関する情報ネットワークを開発し、より良いトレーニング、特に都市計画、大気汚染と水質汚染の削減の分野でより良いトレーニングを確保する。
・ 大量破壊兵器、平和維持、信頼譲成措置、予防外交、アメリカが果たすべき役割などの安全保障上の問題について話し合うため、専門家と役人が個人の立場で参加できるフォーラムを設置する。軍隊の訓練、特に民間の軍事関係における軍隊の訓練に焦点を当てた"ノウハウ"トレーニングを実施する。
・ ヨーロッパの単一通貨の創設が及ぼす経済的、政治的、安全保障上の影響について検討する常設の諮問グループを創設する。