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可能であれば、こうしたプログラムをIMF、世界銀行、国連諸機関などの既存の国際機関と協力し実施する。場合によってはASEFなど誕生して間もないASEMの取決めを利用することや、新しい取決めを計画することもできる。

 

4. 結 論

 

以上の分析から、EUと東アジアの地域主義との間には基本的な哲学的な考え方と歴史の点でいくつかの明確な違いがあるが、地域組織の構築への取り組み方について、将来ある程度乖離が縮小することが考えられる。ヨーロッパがそうだったように、東アジアはグローバライゼーションという課題に対応するため一層の修正を迫られているからである。また東アジアが将来、経済発展を計る上で、EUの経験を適用できる可能性が高まっている。

グローバライゼーションという課題に対応するためには、統治と法治を改善し、民主主義の成熟を計ることが前提条件となる。国家間だけでなく社会の間に、集中的な組織と集中的で濃密な関係に基づいた規範と規則を増やすことで、より弾力的で地球規模の課題に取り組める地域協力が構築できる。東アジアの地域社会は、このような方向で発展させるべきである。どのような呼び方がされるにしろ、東アジアの地域社会はこうした方向で発展するであろう。地域開発がこのような方法で行われて初めて、東アジア社会にふさわしい地域組織ができるのである。東アジアにふさわしい地域組織は、東アジアという広い地域より、ASEANでより早く創設されよう。ASEANではすでに乖離の縮小と密接な協力関係が見られるからである。"開かれた地域主義"と段階的で自主的な政策が採られ、受け入れられている要因の一つとして、東アジアとアジア太平洋地域の間に違いがあることが挙げられる。

しかし結局のところ、東アジアとアジア太平洋地域が国家と社会のコミュニティー作りを本当に進んで行うつもりならば、段階的にせよ確実にEUのモデルを研究すべきである。当分東アジアとアジア太平洋地域には、ペースと方法の違いが見られるかもしれない。しかし東アジアの金融危機により、東アジアとアジア太平洋地域は明らかに地域主義の発達を緊急の問題としてとらえるようになり、これらの地域での地域主義の発達に弾みがつくことになろう。

 

 

 

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