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アメリカ大統領が政治的に痛手を負っている今、EUは重要なリーダーシップを果たす立場にある。EUはアメリカと並んで世界経済のもう一つの"機関車"になれる経済である。EUは(現時点では政治的リーダーシップを取る考えはないが)、経済的なリーダーシップを取ろうと考えており、近い将来こうした役割を果たす準備が十分整っている。

ヨーロッパとアジアは既存のブレトンウッズ制度の改善方法を含め、グローバルな金融システムが抱える問題について検討しなければならない。すでに東アジアの金融危機が、地球規模で対処していかなければならない新しい問題や政策が多数存在していることを示している。1980年代に起きたラテンアメリカの金融危機に対処した、いわゆるラテンアメリカモデルでは、1990年代の終盤に起きた東アジアの金融危機に適切に対処できないことが考えられる。東アジアなどの一地域にとり不安定要因となりかねない短期資金の動きを規制する必要もある。

こうすることでアジアとヨーロッパの密接な協力、特にアジア、ヨーロッパ両サイドが強化し、拡張したいと強く望んでいる国際的な規範と制度に基づいた国際的システムを改善するための協力の基礎が構築されるのである。

次にすべきことは、グローバライゼーションに対処するために地域主義と地域組織が重要な役割を果たしていることを、アジアとヨーロッパがお互いに学びあうことである。地域主義の結果生じた相互依存に対処した経験は、グローバライゼーションがもたらす相互依存に対処するための基礎となりうる。

ここではヨーロッパはアジアに、グローバライゼーションなどの新しい課題を克服するために地域協力と地域組織が重要であることを示すことができる。この分野ではヨーロッパはアジアよりはるかに進んでいるからである。

東アジアで発展した"ASEAN方式"の考えも適当ではない。ASEAN方式のインフォーマルな部分は維持したとしても、グローバライゼーションのように急速で根本的な変化に対応できる新しい規則と組織で補完すべきである。EUが示しているように、組織と規範の目の細かい網を張り巡らすことで、グローバライゼーションの影響への対応に向けた加盟国のコミットメントが強化できるのである。

地域主義は地域の秩序と平和の維持にも重要である。ここでもヨーロッパはアジアに、ヨーロッパの秩序と平和を維持するために、どのような政策、組織、規範が必要となっているのか示すことができる。こうしたヨーロッパの政策、制度、規範はボスニアでは成功しなかったが、ソビエト帝国崩壊のプロセスを積極的に早めている。またOSCEは秩序と平和を維持するために重要な組織であり、ARFはOSCEを真剣に研究すべきである。

グローバライゼーションは大規模で複雑な問題を引き起こした。ヨーロッパとアジアは何よりこの問題の緊急性を認識し、協力すべきである。先にも述べたように、グローバライゼーションの影響は大きな不安定化をもたらしている。特に発展途上国では生活のあらゆる分野でグローバライゼーションの影響が及んでおり、非常に不安定になっている。

 

 

 

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