経済分野、特に金融・銀行の分野では、十分な規制や監視機能もない。法治、司法機関、グローバライゼーションの過程に参加するための前提条件である良好な統治組織と民主主義が特に欠如している。
国際的な資金の流れが不安定なために東アジアの金融危機が起きたというのも事実である。しかしこれほど劇的な影響が出たのは、発展途上国の国家の発展システムが、まだ不適切で未成熟だったからである。
先進国もグローバライゼーションの猛攻撃に直面し、自国の経済と福祉制度を再建しなければならなくなっている。失業、特にブルーカラーの失業は深刻な政治問題になっている。ホワイトカラーの失業も増加している。失業問題はヨーロッパで深刻な圧力となっている。
先進国も政治、社会、さらに文化の分野でも調整に迫られている。しかしながら、先進国は発展途上国に比べ法治などはるかに強力な制度があり、民主的な政治制度が存在している。西洋モデルの中のアングローサクソンのモデルも不平等に直面しているが、政策と生涯教育を調節することで不平等を克服することができる。さらに先進国は民主国家であるがゆえに、欠陥はあるにしろ、発展途上国より強力で柔軟な政治システムがある。
先進国も経済危機に直面しているが、経済危機に対応するのにより適切な制度と柔軟な政治システムがある。民主主義も結局は危機に対し免疫を持っているわけではないが、発展途上国に比べ柔軟で透明性が高いため、適切に経済危機に対応できるのである。この点でも発展途上国には長い道程がある。
3. 東アジアとヨーロッパの協力-東アジアはヨーロッパ連合から何を学べるか
東アジアはまず、金融危機などの急激な変化はグローバルな問題の一つあり、単なる金融問題よりはるかに複雑な問題であることを認識すべきである。この問題が起きたのは、グローバライゼーションのプロセスと大いに関連があるため、問題を克服するためには地球規模の努力が必要である。
最も急を要する重要事項は、EUを含むG7がグローバルな責任を果たすため、自国の経済を立て直し世界経済が不況に陥るのを防ぎ、通貨供給量の引き締めではなく拡張的通過政策を通じ健全な成長を維持することである。一方日本はできるだけ短期間に、こうした責任を果たさなければならない。宮沢計画は日本が東アジアの発展途上国、特に深刻な危機に瀕している国のために一層貢献しようとする重要な努力の現われである。