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中国を新しく台頭する超大国とする今日の評価は次の二つの相反する分析結果を生む32

これらの分析はいずれも中国が強国となると予測する。相違点は、強国中国が侵略的な国家となるか、あるいは国際社会の経済や外交のルールを遵守する国家となるかの判断である。中国の拡張を続ける軍事力、共産党の強固な支配、それに大国が持つ性癖のゆえに悲観的評価をする論者は、中国が将来困った行為に出ることを恐れる。これに対して、諸国家の間の相互依存関係は中国をも平和と秩序の維持の受益者とするので、その国益の中心は経済発展であって、国内問題の解決に大きな関心を注ぎ、その軍備も大国の基準からすればさして驚くに値しない、という考えから中国の将来を楽観し、地域や世界の秩序の維持管理に責任ある立場を維持するだろうとする。

 

この地域の諸国の政府は、地域内での国家間の対抗や軋轢の解消に中国が建設的役割を果たすのを歓迎するだろう。積極的関与の政策は、中国の国民を国際社会の影響に触れさせ、大規模な市場経済を志向するセクターが中国経済の内部で形成されるのを促進した。

アジア太平洋地域諸国の政府は中国を更に全面的に地域の、そしてグローバルな諸機構に組み入れるこを通じて、中国を『穏健化』し、アジア諸国民の一員に組み込むことに熱心である。

 

クリントン大統領とエリツィン大統領が1997年の3月にヘルシンキで会合した席では、NATOの拡大に関しては意見が相違するという事実を認めるという基本的な合意

が見られた。NATO拡大問題に関する議論は沸騰していた1997年の4月に江沢民主席がモスクワを訪問した際に見られた中ロ関係の改善の兆しは、多分当然の成り行きだが、ロシアが中国カードを切ったものと解釈されたのだった。中国もロシアも米国がその国力を何らの拘束も受けずに海外で行使するのを恐れていた。この時までにはしかし、これ以外にも両国の利害が一致する理由が存在していたのも事実だ。例えば、両国は共にイスラム勢力の台頭と、中央アジアでのイスラム原理主義を恐れていた。また両国は共に西側諸国からの信用供与と、投資と市場を必要としていた。ロシアが国力を回復して再び周辺諸国に幅を利かすようになるのを、今日の中国がまったく気にしないというと嘘になる。ロシアもまた、中国が歴史的に極東シベリアに対して抱いてきた意図に対する不安を払拭しきれずにいる。

 

ロシアの共産党の党首で、今やボリス・エリツィンの主要な後継者候補の一人であるゲナディー・ジュガノフや、過去に外相を務めて現在首相の地位にあり、エリツィンの第二の主要な後継者候補であるエフゲニー・プリマコフは、西側による「NATO拡大の動きへの対応として」ロシア国内で中国との協調と同盟を進める運動に指導的役割を果たしている。ロシアの共産党の第四回全国会議で、ジュガノフはNATOの目的を、ロシアの周囲に防疫線を張り巡らして隔離することにあると説明し、これが理由でロシアとしては中国、インド、そしてアラブ世界との関係を強化することが必要となったのだ、と述べている33

 

 

 

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