日本財団 図書館


EUの貿易政策体系は、加盟申請国にも拡張され、単一の貿易規則体系、単一の関税および単一の行政手続体系の実現で、欧州域内の取引は大幅に簡素化されるでしょう。

 

投資および貿易環境の向上に加えて、統合拡大は、第三国にも即座に具体的な経済的利益をたらします。現行のEU基準と同じ取り扱いの公開基準を加盟申請国が採用し、共同体共通関税率(CCT)が実現されることで、財の貿易にかかる関税が包括的に引き下げられるからです。

 

サービス貿易に関しては、EUのGATTに対する取り組みが加盟申請国に拡張され、さらに共通市場が実現されることで、第三国のサービス供給主体にとって環境が大きく改善するでしょう。

 

現在EUの投資家に提供されている非常に高い取り扱い基準は、拡大EUにも適用可能です。EUの競争および補助金に関する規則によって、不公正な補助金支給、競争を歪め、域内投資の差別につながる慣行を禁止する法律に実効性を与えられるでしょう。

 

統合の拡大に際してもこれらの政策を維持することは、いわゆる「平らな競技場」とよばれる公正な競争条件を満たす必要のある欧州共同体の法規と単一市場規則にも不可欠であり、原理原則としても正しいことです。効果的な規則と基準を備えた国際貿易システム下での自由市場の理念は、選択の多様化、比較優位の強化および資源の有効利用といった見地から、普遍的とはいえないまでも、広く受け入れられるようになりました。

 

より正確には、EUが欧州域内および域外との貿易における系統的な市場開放により利益を受けてきたことに疑いの余地はありません。この経験から、EUの開放性と、日本などの国における流通の過剰な規制と管理がもたらす国内市場への参入障壁の順序だった撤廃が組み合わされば、お互いに利益となると助言するのです。

 

責任のある政策立案者には、もちろん、熟慮の上で変化を追求する必要があるという鋭い認識が必要です。近年の国際的、地域的な経済混乱によって、こうした理解が強調されています。以前は市場の移り気を認識していなかった人も、今ではきっと、「金融市場は極端に走る傾向があり、振子のように動くというより、建物破壊用の鉄球のように、次々に各国経済を破壊していく」という、ジョージ・ソロス氏の判断を正しいと評価し、これにのっとって行動しているでしょう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION