こうしたアプローチによって達成されるはずの潜在的な政治的、経済的利益は、非常に重要です。公正に見て、現在のEUが、共通の社会正義と高い公民権の基準を持つ、平和で安定した、豊かな地域であることは明らかでしょう。EUは世界最大の単一市場であり、自由貿易と自由市場実現に向けた努力を続けています。また、加盟国の努力によって、世界最大の開発、人道援助の供給主体となっています。
この特徴は、拡大によって強化されるでしょう。新規加盟国の総人口、約1億人が加われば、EU市民は、約5億人となります。域内のGDPは合計で7兆4000億ECU(本日の為替レートで約8兆6000億ドル)に上り、拡大EUは、世界貿易の20%を占め、世界の対外直接投資(FDI)の約46%を供給し、31%を受け入れることになるのです。
加えて、市場の拡大と安全の向上が、現在の加盟国と加盟申請国における、経済的、社会的、文化的な多様性を一層拡大する機会を提供するものと、実際に信じられています。
このことは、欧州の境界を超えて良い効果を生むでしょう。拡大EUと単一市場が、常に世界経済の牽引役となるとは保証できませんが、拡大による変化が企業経営や革新を刺激し、貿易と富を増やすことは明らです。
これは、アジアにおけるEUの主要なパートナーである日本にとっても重要なことです。1997年の、日本EU間の相互貿易額は約1100億ドル(930億ECU)に上り、日本からEUへの投資は610億ドル(530億ECU)近くと、日本の対外直接投資の約20%を占めています。EUから日本への直接投資は約84億ドル(71億ECU)と相対的に小額に止まっており、投資環境として魅力を増すため、日本が規制緩和を一層進めなくてはならない理由の一つを強調しています。
日本が取り組んでいる国際金融市場における混乱や特定の経済的問題によって、規制緩和の重要性が一層強調されているのは明白です。
ご来場の皆さんの多くはご承知のことでしょうが、日本の中東欧加盟候補国への関与は依然小さいものの、日本の投資が13億ドル(11億ECU)に増加するのに伴い拡大しています。統合拡大により域内の国境がなくなり、規制と基準の調和が進むことで、財やサービスの自由な流通が保証され、EUの主要な貿易相手国への経済機会が増大した場合には、これらの国の潜在的成長力は明らかに大きくなります。