第4セッション
拡大ヨーロッパとその東アジアへの影響
欧州委員会委員、運輸政策/全欧交通網担当
ニール・キノック
40年以上にわたる発展の末、欧州連合(EU)は統合、拡大という二つの事業に乗り出そうとしています。これらは、EUの前身、欧州共同体(EC)創設以来に起こったいかなる変化よりも大きな意味を持つでしょう。
二つの事業は注意深く準備が進められており、かつてなく緊密で、広範な統合の指導原理を熟慮の上応用する試みです。また、いずれも欧州にとどまらず、世界に大きな影響を及ぼすことは明らかです。
単一通貨を持つ通貨統合の確立は、単一市場の合理的な発展です。安定保障、健全財政、低インフレ、投資の増加、経済への信頼性向上といった、統合の潜在的利益は、欧州のみならず世界経済にも良い影響を及ぼすはずです。
東欧および南欧諸国への統合拡大の提案もまた、合理的ななりゆきといえます。
より多くの国家間で経済的、政治的な相互依存性を高めることで、安全、民主主義、繁栄が確固たるものとなり、拡大EU加盟諸国はもとより、欧州大陸諸国、他の世界各国も、必然的に利益を享受できるでしょう。
当然、EUは新規加盟申請国の加盟手続きを、単に画一的な考慮に基づいて行っている訳ではありません。挑戦の困難さを十分承知しているにもかかわらず、欧州の人々は、鉄のカーテンが欧州大陸全域に残した傷あとを癒すのは、望ましく合理的な政治的、経済的目標であり、かつ、歴史的義務でもあるという深い思いを抱いているのです。
それゆえEUは、加盟申請国に協力し、加盟国としての義務と機会を引き受けるつもりならば達成する必要のある、広範な経済的、政治的、社会的前進に対する努力を、過重な負担なく達成できるよう援助しているのです。
このような背景を踏まえて、私は、現在進行中の拡大プロセスの手続きと、見通しについて触れ、さらに、その発展のより広い国際的な意味について考慮したいと思います。