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3. ユーロは強い通貨になるのか、弱い通貨になるのか

 

ECBがユーロの国際化において、将来どのような役割を果たすのかは明確になったが、ユーロがドルと円に対し、どのような役割を果たすようになるのかという点は、まだ不明である。この問題は我々に、「ユーロは強い通貨になるのか、弱い通貨になるのか」という、しばしば尋ねられる質問を想起させる。

私はユーロはかつてのドイツマルクのように、強い通貨になると推測する。ヨーロッパ経済のファンダメンタルズは堅調であり、ヨーロッパの通貨当局はヨーロッパの通貨を民間投資家と外国政府にとり魅力的なものにするために、安定志向型の通貨政策と財政政策を採ると思われるからである。

しかしながら、最近、私の予想とは反対にユーロは当初は弱い通貨になるだろうという議論がなされている。ヨーロッパの政府と通貨当局の間で論争が起きており、これらの論争により、まだ試されてない欧州中央銀行の信頼性が損われ、経済通貨統合のプロセス全体に長期的な悪影響が及びかねないためである。

 

4.現在の論争を軽視すべきでない

 

(金利を引き下げるべきか、成長と安定に関する協定の条件を解釈し直すべきか、ECBの創設により利用可能になった通貨準備の少なくとも一部を超欧州ネットワークへの資金提供に利用すべきかなど)ヨーロッパで力強い持続可能な成長を促進するための最良の戦略をめぐり、ヨーロッパの政府と中央銀行の間で最近起きている論争を軽視すべきではない。実際、これらの論争は減速しているヨーロッパ経済を再び成長に向かわせることをめざした経済政策の戦略の一貫性に悪影響を与え、欧州中央銀行の信頼性を損いかねない。

ポール・クルーグマンが別の意味合いから適切に指摘したように、中央銀行も政府も「信頼性を高めるゲーム」を世界規模で行っているため、現在の論争には幾分高い代償がつきかねない。

 

 

 

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