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第3セッション

 

ユーロ誕生の国際的意味合い

 

駐日欧州委員会代表部・一等書記官

モレノ・ベルトルディ

 

(本論文に示された分析と見解は筆者個人のものであり、必ずしも欧州委員会の立場を示すものではない。)

 

1. はじめに

 

EMU(欧州通貨同盟)と共通通貨は(安定的で健全なマクロ経済の枠組みを創出する、単一市場の創設で始まった経済統合のプロセスを完了する、構造改革を促進しEUの競争力を高めるなど)、主にヨーロッパの国内の目的のために創出されたが、万能な米ドルに対する釣合いを取るなどの国際的な考慮も背景にあった。

しかしながら、この新しい経済統一体の規模を考えると、EMUとユーロの国際的な意味を慎重に考察しないわけにはいかない。ユーロが広い地域に導入され、同地域が安定志向的な政策枠組みを採っており、同地域の金融市場が統合されることは、ユーロが主要な国際通貨になる可能性が高いことを意味している。ユーロが主要な国際通貨になれば、国際通貨システムの機能に影響を与え、ある程度まで変化をもたらすことになろう。

 

2. 国際通貨としてのユーロの経済的影響

 

非EU加盟国とユーロが導入される地域との国際貿易関係は、おそらく、ユーロの導入が非EU加盟国の経済状態に影響を及ぼす主要な経路の一つになるだろう(Bekx(1998)を参照)。

EMUの完了にともないEUの経済成長に好ましい影響が及ぶ結果、貿易創出の効果が生まれよう。ユーロが導入される地域の国々の競争力が高まる結果、貿易転換効果が生じ、貿易創出効果がある程度打ち消されるかもしれないが、全体的にEU非加盟国の貿易に、小さいながらも好ましい影響が及ぶことになろう(IMFの推計に基づいた表1を参照)。さらに、ユーロ地域のビジネスサイクルの同時性がますます増大していることを考えると、ユーロ地域の経済成長は世界の他の地域に今後さらに大きな影響を与えることになろう(Bekx(1998)を参照)。

 

 

 

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