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加盟国はこれを全体として採用することを義務付けられ、同時に、EUのメンバーとして、共通の農業政策から高速道路交通の規制にまで及ぶ厳正な経済上の規制に従わねばならない。最近カルディフで開催されたEUの首脳会議の席上で、ある高官は、東欧諸国からの加盟については、2005年までに参加する可能性のある国は全くないと述べている(5)。これに加えて、東欧諸国の加盟に際しては、国毎に特有の政治問題が絡んでいるので、結局は東欧諸国のEU加盟が実現するにはまだ相当の時間を要するだろう。

 

2. NATO拡大の第二段階

 

今やNATOはより困難な一連の問題に直面している。すなわちそれは、拡大の第二段階ではどの国の加盟を認めるのかという問題と、今回の拡大の背後にあるのは決して悪意を含む対ロ政策ではないのだと言う事実をどのようにロシアに説明し、納得させるかという問題である。NATOの最前線が東に動き、ロシア本土に接近すると共に、今や、第二次拡大の動きがロシアとの深刻な摩擦を起こすのを回避する方法は本当に存在するのかという問題が新たに問われている。

 

まず第一に筆者の言いたいのは、現状に今後変化を加えるに当たっては、意識して注意深い態度で臨むべきだという点だ。これに関係してロシアの指導者層に明瞭に知らせるべき事項の一つは、NATO拡大の今後の速度と範囲は、ある意味ではロシア側での言動に依存しているという事実だ。東欧諸国が感じる不安感を募らせるのか、或いは緩和させるのかについて、ロシア側の言動は際立った影響力を持っているからだ。過去50年にわたった続いてきたソ連による支配の時代に見られた侵略や略奪の行為はロシアの犯した間違であり、ロシア人は今日それを残念に思っているのだ、ということを東欧諸国が理解できるような態度や行為を、今日のロシアは政治的に可能な範囲で示すことができるはずだ。これについては、筆者は最近日本政府が韓国国民に伝えたこの種の意思表示のことを念頭に置いているのだ。

 

第二に、現時点でのロシアの外交政策を特徴づけている平和的な傾向からして、NATO側に立つ政治家達-特に米国の指導者-は、NATOの第二段の拡大計画の内容と時期の決定については、注意深く慎重な態度で臨むべきだと筆者は考える。西側がロシアを恐喝するために使える地域を手に入れる目的でNATOの新規加盟国を選んだのではないという事実は、特に明確な言葉で説明されるべきだろう。

 

 

 

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