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ラトビアは非加盟国の格上げの競争では一歩先を行くが、リガは実際に今年中に格上げされる保障はほとんどない。十月三日に実施されたラトビアでの市民法改正についての国民投票の結果は成功裡に終り3、リガ自身の適格性とは関係のないところで格上げ問題に重大な影響を及ぼしかねない。加盟国の意見は分かれ、一方はまずルクセンブルグでの決定により加盟候補国を個別に審査することから始めるべき(そして少なくともラトビアは「先行国」へ格上げされるべき)だと強調するのに対して、他方はルクセンブルグでの決定に反して、「後発組」はグループとして取り扱われるべきだとする。委員会でもこの点についての見解は分かれているようであるが、このような格上げが行われるべきだとする部署もあり、その国はラトビアだとされている。フランスと英国を含む加盟国のなかでも、現時点での格上げを受け入れることには消極的である。他の加盟国は、政治的には一国なら格上げは実現可能だが、二国以上は無理だろうとする。スロバキアにみる政治的発展やラトビアとリトアニアを区別することが非常に難しくなっている状況は、格上げ自体を非常に難しくしている。

フランスは加盟希望国における諸問題への懸念表明には他国を凌ぐものがあり、委員会審査結果の詳細な報告を求めている。キプロス加盟問題についても前線に立ち、正式交渉はトルコ側が政府の代表団として参加しない限り開始されるべきではないとする。これに対してギリシャ政府は激しい反発を表明し、EU拡大手続きそのものを妨害しかねない。

EU拡大推進派の加盟国にはフランスの真意が読みかねるとの見方がある。両立し得る政策ではあるが、EUそのものの発展に対する配慮なのか、EU拡大手続きそのものを遅らせる意図があるのか、不明である。

 

国境での新たな検問--新たな分断線?

デリケートな問題である自由な労働力の移動と同様に、加盟国では、中欧諸国との国境での検問の有無は東欧犯罪組織の流入、麻薬密売の増長と密入国の増加との関係で懸念される。同時に、効果的な国境管理は適応過程に極めて重要であるだけでなく、経済改革の基礎を支えるものとしても不可欠である。シェンゲン協定の実施は、域内国境での検問を廃止すると当時に、域外からの流入を厳しく制限する検問を必要とする。加盟予定国は、最近になってようやくシェンゲン事実(Schengen acquis)との調整で査証政策・越境手続きを調整し始めている。

このような国境問題は新たな「分断線」を、例えばポーランドとウクライナの間で、もしくはハンガリーに対し、ルーマニア及びウクライナとの間に生むことになると懸念される。この問題は経済及び安全保障の面からも極めて重要な貿易、旅行、超国家協力に否定的な影響をもたらしかねず、中欧諸国とEU加盟国は解決策を模索中である。しかし、現時点で提示されている具体策は極めて少ない。

 

 

 

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